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母の想い
4部分:第四章
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第四章

「そうだったな。そういえば」
「それでホワイトがお家に来たのって」
 清音はさらにお父さんに言う。
「三年じゃないの?お母さんが来てから」
「ああ、そうだな」
 これもまた娘に言われてやっと気付き思い出したことだった。
「そういえばそうだった」
「ひょっとしたらって思うんだけれど」
 何時の間にかホワイトは清音の側に来ていた。そうして彼女の足に頬を摺り寄せてきている。甘えている証拠だ。
「ホワイトってお母さんのね。生まれ変わりじゃないかしら」
「ははは、まさか」
 本当にまさかと思いながらもそれは否定した。
「そんなわけはないさ。確かにお母さんはそう言ったけれど」
「ええ」
「ホワイトがそんな筈はないさ」
「それは違うの?」
「ホワイトは猫だよ」
 こう清音に言う。
「ある筈ないじゃないか。そんなことが」
「違うの?」
「ああ、違うさ」
 やはり心の中ではまさかと思いながら娘に告げるのだった。言いながらホワイトの方を見る。
「そんな筈がないさ。確かに賢い猫だけれどね」
「そうよね。悪いことしないし」 
 人の困るようなことは一切しない猫なのだ。
「奇麗好きだし」
「うん」
「お風呂も好きだしね。こんな立派な猫いないわよね」
「寂しいかい?」
 ふと娘に尋ねるのだった。
「寂しいって?」
「だから。お父さんはいつも仕事だけれど」
「うん」
「ホワイトがいて寂しいかい?それはどうだい?」
「寂しくなんかないわ」
 すぐにお父さんにこう答えることができた。
「だって。ホワイトがずっと一緒にいてくれるから」
「だから寂しくないかい」
「ホワイトが一緒にいてくれたらそれでもう充分よ」
 御飯のキャットフードを食べるホワイトを見て目を細くさせていた。
「それでね。もう充分よ」
「そうか。満足しているんだな」
「ええ。ホワイト大好き」
 こうも言うのであった。
「ホワイトがいてくれたらそれで私幸せ」
 これが清音の偽らざる心だった。彼女はホワイトのおかげで寂しくなく明るく楽しく幸せに生きていた。中学校でも高校でもそうだったしその心のおかげで何をやっても上手くいき失敗してもめげなかった。結果として高校も無事に合格し大学にも。ホワイトはもう結構な歳になっていたがそれでも元気なものだった。
「御前も遂に大学生だな」
「うん」92
 二人は自分の家のテーブルに向かい合って座っていた。そのテーブルの上には清音が作った御馳走とビール、それにジュースが置いてある。それで祝っているのであった。
「思えばあっという間だったね」
「そうだな。長いようで短かった」
 貞晴は皺の増えた顔でこう娘に告げる。その手にはコップに注がれたビールがある。
「本当にな」
「小学校からだ
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