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魔法少女リリカルなのは ―全てを変えることができるなら―
第六話
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で握った。

「なんでかな……朝我のこと、分かるんだ。
もちろん、全部が分かるなんて傲慢なことは言わないけど……分かるんだ」

「っ……」

 朝我の心臓が、大きく飛び跳ねた。

 周囲の音全てがなくなり、フェイトの声だけが鮮明に聞こえるような感覚にとらわれた。

「フェイト……それって……」

「なんでなのかな……私にもよくわからないんだけど、ずっと前から知り合いだったみたいな感じがさ、初めて出会った時から何となくしたんだ」

「……」

 心臓の鼓動が、血の流れが、急激に速度を上げた。

 呼吸が乱れそうになるのをギリギリでふみ止め、しかし全身の熱が上がるのを止めることはできなかった。

 心の底から溢れ出す高揚感。

 それはまるで、小さな奇跡と希望を得たような気分だった。

 もしかしたら、一巡目の記憶が、想いが、ここにいるフェイトの中に流れているのではないか。

 そんなありえないようなことを、しかし朝我は起こったと思った。

 一巡目のフェイトの想いが、ここにいる彼女にも存在しているのであれば。

「フェイト……」

「ん?」

 伝えたいと思った。

 今まで抱えてきた、本当の想いを。

 もし伝えることができたら、どれだけ楽か、どれだけ幸せか。

 ――――そう思った所で、彼は冷静になった。

「……今日は、月が綺麗だな」

「え……ああ、うん」

 呆気にとられたフェイトは、僅かに返事を遅らせた。

 朝我は空を見上げ、満月をじっと見つめた。

 そんな彼に釣られて、フェイトも満月を見つめた。

 彼がどんな想いを伝えたかったのか、理解することができず。

 しかしフェイトはこの時、彼の傍にいられることを幸せに思った。

 もっといたいと、そう思った。

 自然頬は緩み、彼に笑顔を見せる。

 ――――そんな笑すらも、朝我の心の奥底では鋭い刃となって傷つける。

 この先に待ち受ける光景も知らず、彼女はまた無邪気に彼に笑いかけた――――。
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