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土蔵
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第二章

「とにかくうちに来い。皆な」
「まさかそれじゃあ」
「俺達もあの土蔵に入るのかな」
「そうじゃないのか?」
「俺達も遂にか」
「入るのね」
 彼等は庄屋の話からだ。そのことを考えるのだった。
 そしてそのうえでだ。彼等は庄屋の家に入ったのだった。
 まずは大広間でだ。宴の場を設けられた。
 酒に猪や岩魚や山菜といった山の幸、この村の周りの幸がうず高く積まれてだ。彼等に振舞われる。彼等はそうしたものをたらふく楽しんだ。
 その彼等を見てだ。庄屋は笑顔で話すのだった。
「どうじゃ。美味いか」
「うん、美味いよ」
「酒も御馳走も」
「滅茶苦茶美味しい」
「こんなに美味いものがあるなんて」
「大人になったからじゃ」
 だからだとだ。庄屋も話す。
「その祝いじゃ。たらふく楽しめ」
「ああ、それじゃあな」
「お代わりしていいよな」
「酒も御馳走も」
「まだまだあるよな」
「好きなだけ飲み食いするのじゃ」
 まさにそうしろとだ。庄屋も話す。彼の前にも酒や御馳走はあるがそうしたものには彼は一切手をつけない。そうして彼等に話すのだった。
「それからじゃ」
「それから?」
「それからって?」
「中に入ろう」
 こんなことを言うのだった。
「中にな」
「中にっていうと」
「まさかな」
「そうだよな。ここ庄屋さんの家だしな」
「それじゃあな」
 彼等も気付いたのだった。庄屋の家となればあの土蔵だ。大人になれば入られるというその土蔵にだ。入られることについて話すのだった。
 そのうえでだ。彼等はだ。酒と御馳走を楽しんでからだ。
 庄屋にだ。案内されるのだった。庄屋はこう言うのだった。
「他言は無用じゃぞ」
「他言って?」
「誰にも話したらいけないんだ」
「そうじゃ。村の者以外には言うな」
 広い屋敷の廊下の先頭を歩きながらの言葉だった。その後ろに彼等が続いている。
「子供達にもじゃ」
「何かそれってな」
「俺達が言われたのと同じだよな」
「子供の時に言われたよな」
「そうな」
「そうじゃな。同じじゃな」
 庄屋もだ。そのことを話すのだった。
「おめえ達も大人になったからじゃ」
「そのことを知るんだ」
「土蔵のあれだよな」
「土蔵に何があるんだ?」
「それで何なのですか」
 男も女もだ。庄屋に問う。するとだ。
 庄屋はだ。彼等に顔を向けて前を歩きながらだ。こう話すのだった。
「悪い場所ではない」
「何かのご本尊があるのかな」
「それか怪しい儀式をするのか?」
「そうなのか?」
「まさかと思うけれどな」
「ご本尊もなければ儀式もない」
 そういったものはないというのだ。

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