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FOOLのアルカニスト
名という誓約
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情はどこまでも真剣で、眼光には決意の光が満ちていた。

 「……いいでしょう。一時の迷いかもしれませんが、少なくとも今の貴方はこの身を任せるに価する。私が予期したものとは異なりますが、これもまた悪くはないのかもしれません。
 では改めまして、妖獣チェフェイこと『悠華』、今よりこの身は貴方様のものです。MAGで構成された仮初の肉体ですが、髪一本、血の一滴に至るまで、御身の為に使いましょう。
 ですが、お忘れなきよう。この身は貪欲なる獣であることを。貴方様の魂がその輝きを失った時、魂諸共喰らい尽くすものであることを」

 腰を折って、優雅に一礼するチェフェイこと『悠華』。それは彼女なりの誓約であり、覚悟。そして、絶対の契約だ。徹が価値のないものとして、彼女の目に映った時、彼女は容赦無く牙を剥くだろう。それは直接契約であるからこそ、唯一無二絶対不可侵のけして違えることのできないものだ。

 「ああ、契約だ。俺が仕える価値なしと思ったら、殺せ。魂も何もかもくれてやろう。そのかわり、その時まで俺もお前の全てをもらう。肉体は云うに及ばずその魂も例外ではない。必要なら合体もしてもらう」

 「承知しました。
 ……ところで主様、先程聞き捨てならない科白を言っていませんでしたか?誰が血も涙もない女ですか?!」

 どこか厳かな雰囲気の下、誓約にして契約はなされた。しかし、次の瞬間には一変した。

 「いや、そんなこといったけなー?(まあ、言い方は違えど大まかな意味は間違ってないがな)」

 「しらばっくれるつもりですか?!貴方も聞きましたよね友真?」
 
 内心で冷や汗をかきながらとぼける徹だが、悠華の追求の手は緩まない。友真に視線で懇願するも、
それは無情にも裏切られた。

 「ああ、そいや言ってやしたね。「非情」とか「冷酷」とか」

 (何言っちゃてくれてるんだ、お前は!そこは聞いてませんと答えるところだろ!)

 徹は内心で絶叫するが、その叫びは誰にも聞こえることはない。

 「そうですよね。私も確かに聞きましたからね。さて、こんな尽くす女にして、良妻賢母な私にそんな酷いことを言われたのはどこのどなたでしょうね?」

 嗜虐の笑を満面に浮かべながら、顔を近づけてくる悠華に、『笑みとは本来攻撃的なものである』という言葉を思い出し、徹は抵抗を諦めたのだった。

 この後、異界の奥にいる異界の主を見事討ち滅ぼし、依頼を達成した徹だったが、傷一つ負っていないのに凄まじく疲れた様子であったそうな。反面、悠華は非常に機嫌が良さそうで、それを呆れた様子で見つめる友真の姿があったそうな。
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