本編
第十五話 クーデター
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西暦2115年 10月 16日
ホルス・マーチス
現在会議室はまるで宇宙のような静けさに包まれている。
マスティス副議長の言った言葉がその原因だ。
逮捕するといったが大統領は何か事件を起こしたのだろうか。あの大統領がそんなことをするとは思えない。
この静けさを取り払ったのはタレクだった。
「マスティス副議長、大統領を逮捕するといったが何か大統領は事件でも起こしたのかね。そうであれば決定的な証拠を見せていただきたい」
他の委員長らが一斉に副議長に視線を向けた。
「残念ながら証拠はない。大統領が事件を起こしたわけでもない」
この言葉に余計頭がこんがらがった。他の委員長も首をかしげている。
またタレクが質問をし始めた。
「ではなぜ大統領は逮捕されなければならないのかね。事件を起こしたわけでもないのだろう?」
その通りだ。事件を起こしたわけでもないのになぜ逮捕しなければいけないのか。
「それは・・・この国のためだ」
国のため?大統領は何か国民に対して圧制を敷いたわけでもない。逆に国民は好意的だ。大統領を逮捕すれば逆に国民の反感を買うのではないのか。
「国のためとおっしゃったが、大統領は市民を苦しめるようなことは一切していない。逆に市民からは支持されている。であるのに副議長は大統領を逮捕することが国にとってプラスであるとおっしゃるのかね」
「そうだ」
きっぱりとしたい言い方だった。しかし、大統領を逮捕することでプラスになることなどあるだろうか。私の中ではそのようなことはひとつもない。他の委員長も首をかしげて顔を見合わせている。すると副議長が話し始めた。今度は大統領のほうを向いている。
「閣下はあまり例のないとても優れた大統領でしょう。閣下は就任してすぐに”戦災孤児育成法””専制主義排除法”などの悪法を廃法にしました。その後も税率を5%減税し、教育予算を増やして高校まで無料で学べるようにしたりと市民の国家のために最大限努力してくださいました」
その通りだ。大統領は国家のため、何よりも市民のために尽力してきた。逮捕する必要がどこにあるというのか。
「しかし、閣下は重要なことを破っていらっしゃいます」
重要なこと?法律でも破ったというのだろうか。他の委員長も顔を見合わせている。
すると、今まで沈黙を続けていた大統領が口を開いた。
「・・・重要なこととはいったい何のことだ」
いつもの大統領の声ではなかった。
「閣下、ここが何制の国かもう一度考えていただきたい」
どういうことだろうか。この国は民主共和制だが・・・それと大統領の逮捕とどう関係があるのだろうか。
「この国は民主共和制だ。市民から選ばれた者たちが市民の意思に基づいて国を動かしていく」
「そう、その通りです。しかし、閣下は市民の意思に基
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