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払われる迷い
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第一章

                          払われる迷い
 今は違う。昔とは。
 ふとだ。速水丈太郎はこんなことを考えた。黒い髪で顔の左半分を隠している。右だけが見えているが色は白く顔は細い。顎はやや先に尖っている。鼻は高く黒い目は切れ長だ。眉は細くその切れ長の目に従っている。
 青いスーツに裏地が赤のコートにだ。白いブラウスに赤いネクタイをしている。その彼が今一人の女性を前にしていた。そして彼女の話を聞いているのだ。
 その女性はだ。こんなことを言うのだった。細い眉にややふっくらとした顔をしている。優しい穏やかな顔をしており髪は黒くロングにしている。
 全体的に穏やかな雰囲気の彼女がだ。速水に話していたのだ。
「今はですね」
「今はなのですね」
「はい、昔と違います」
 こう彼に話す。それでそう考えた速水だったのだ。
 彼女はだ。さらにこう言うのだった。
「そう思います」
「過去と現在は違いますよ」
 速水はここで彼女にこう告げた。
「それは事実です」
「そうですね」
「そして今の貴女は」
 彼女に言う。今彼は自分の仕事場にいてそこで彼女の話を聞いているのだ。銀座のビルの一室にあるその個人事務所においてだ。彼は占いの場を持っている。そこでいつも話をしているのである。つまり彼女は客というわけだ。
 その彼女の話を聞いてだ。彼は言うのだった。
「何をお望みですか」
「何をですか」
「貴女の過去が今の貴女にどう関わるかですね」
「はい、それです」
 彼女は俯いた顔で速水の言葉に頷いた。
「あの時の私は男の人が好きでした」
「恋愛ですね」
「しかし今の私はです」
 ここでだ。顔を曇らせてだった。彼女はこう言うのだった。
「男の人ではなく」
「男の人ではないというと」
「女の人が好きになってしまいました」
 そうなったというのである。
「それでその人と」
「一緒になえるかどうかですか」
「どうなるのでしょうか」
 身体を前に乗り出してだ。速水に問うてきた。
「そのことは」
「ではです」
「では?」
「そのことを占わせてもらいます」
 こう申し出る速水だった。そのうえでまた言うのだった。
「ここは占い師の場所ですから」
「はい、私もです」
 ここで彼女も頷いてきた。そのうえでの言葉だった。
「それで占ってもらいたくて来ました」
「その恋の行方をですね」
「御願いします。宜しいでしょうか」
「私は誰も拒むことはありません」
 速水は眉を顰めさせる彼女に穏やかな笑みと共に告げた。
「誰もです。来て頂いた方はです」
「その人は」
「誰でも占わせて頂きます」
 そうするというのである。
「ですから」
「そうですか。それでは」
「では早速占わせて
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