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乱世の確率事象改変
与えられた禊名
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使われたのは俺の方なんだが?」

 自分が悪いのだ、と思っている彼が答えると、華琳は大きなため息を吐き出した。

「……相変わらずそういう所は腹立つわね。春蘭のような愛らしさが感じられない」
「おい、遠回しにバカって言ってんのか」
「さあ? 許したのに真名を呼ばないような意地っ張りは確かにバカだと思うけれど。月と詠、雛里のことは別として」
「いや、なんつーか……ほら、な?」
「ほら、な、じゃない。誤魔化されてなんかあげないわよ、私は」
「う……」

 当然の咎めであるのに楽しげで、自分も呼んでいない事を棚に上げる様は子供のようで、三人は華琳の変化に驚きを隠せず言葉を失う。

「……一応さ、形式ってもんを貴ぶべきかなと」
「なら跪いて私の為の将になると誓ってくれるのかしら?」
「それは互いの為にならないって分かってるだろ、お前さんも」
「形式を貴ぶべきと言ったのはあなたでしょう?」
「ぐっ……ああもう……分かった、分かりましたよ華――――」
「ただ、軽く呼んだら頸を刎ねるわ。それと気持ち悪いから似合わない敬語を使うのも禁止」
「どうしろと!?」

 せっかく呼ぼうと決めたのに……自業自得ではあるが、華琳も苛めるのが楽しくなってきたようで意地の悪い笑みが深まっていた。

「自分で考えて好きにすればいいじゃない。大バカ者で意地っ張りの幼女趣味男」

 彼のこめかみに青筋が走った。一応、分かってはいるが最後の発言だけは認められない。

「被せて貶しやがって……そっちがその気ならしばらく意地っ張りの百合っ子覇王様って呼ぼうかね」

 ついさっきまで笑っていた華琳の目から笑みが消える。表情は笑っているだけに、彼女の苛立ちが殺気の如く突き刺さった。

「へぇ、分かった。それでいいわ。絶対よ? とりあえず春蘭と秋蘭の前で呼んでみなさいな」
「……怒られるの確定じゃねぇか」
「あの子達も既に怒ってるわよ、凄く。歓び勇んで飛んでくるんじゃないかしら」

 彼としても、春蘭は別にどうでもいい。いつも通りに追いかけっこを繰り広げたり喧嘩するだけなのだ。
 問題は秋蘭。普段怒らないだけに、どんな返しをされるか分かったものではなかった。

――妙才がキレるとこなんざ想像できないが……ああいう人間に限って怖いんだよなぁ。

 それでも呼ぼうと考えない当たりが彼の度し難い意地っ張りの所以ではあるが。

「……謝ったら――――」
「ふふっ、まず私が許してないのだけど? その点を鑑みて妥当な罰を覚悟しなさい」
「おおう……どうしようえーりん。マジでやばい」
「ボクに聞くなバカ秋斗!」
「いてっ」

 先程までの強気な彼など何処にもおらず、このへたれが、と華琳は内心で毒づいていた。
 いじめてやるの
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