Interview13 アイリス・インフェルノ
「できるわけないわ」
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
ついにクルーザーは、一見して大洋しか広がっていない海のど真ん中で航行を止めた。
「ここよ。いずれ貴方たちが『断界線』と呼ぶ場所。今でこそこうして断界殻がふてぶてしく邪魔しているけれど」
ルドガーたち全員が見守る前で、イリスはデッキの突端に絶妙なバランスで立った。
「やってごらんなさいよ。できるわけないわ」
応えて、イリスは小馬鹿にするような笑みを浮かべた。ミュゼはさらに目を眇めた。
それだけのやりとりに、人生で一度も見たことのない剣呑さがあった。
「精霊態のほうが早いのだけど、そしたら足が接しているこの船まで蝕んでしまうからね。ちょっと時間をちょうだい」
イリスは無造作に紫のジャケットを脱いで落とし、ラバースーツの右腕を覆う部分だけを脱いだ。危うく右側の乳房が露出しそうな脱衣だった。
イリス本人は気にしたふうもなく、素手を何もない空間にかざした。
すると、そこに透明な壁でもあるかのように、空間が黒ずんでいく。じわじわと。雪白に落としたインクのように。
――イリスの蝕のマナが、空間を隔てる殻を、蝕んでいる。
「うそ……」
ミュゼの呆然とした呟き。ルドガーは内心、それ見たことか、と思った。
(イリスはできもしないことなんて言わないんだ)
やがて黒ずみは止まり、タマゴの殻が一点から全体に向けて割れるように、ヒビが走った。
黒い空間が朽ちて落ち、そこは背の低いトンネルに姿を変えた。
イリスはラバースーツを着直し、デッキに降りてジャケットを羽織り直した。妙にほっとした。
「ここを潜り抜ければリーゼ・マクシアよ」
イリスが断界殻に開けた穴をクルーザーで通り、彼らはリーゼ・マクシアの大洋に出た。
そこから陸地できる場所を探すのが大変だった。クルーザーは黒匣技術の塊だ。この世界のミラ=マクスウェルかミュゼに見つかれば、諸共殺されかねない。
なるべく人気のないサマンガン海邸よりの波止場を見つけて上陸し、ルドガーはやっと息をついた。
同行者たちをふり返る。
ちょうどエリーゼがエルを支えて調子を聞いていた。レイアのほうは、すっかり伸びきったルルを揺さぶって元に戻そうとしていたものだから、笑いを堪えるのが大変だった。
「ところでここ、リーゼ・マクシアのどこなんだろ」
その疑問に答えるかのように、ローエンがルドガーに声をかけた。
「あれを見てください。ガンダラ要塞です」
ルドガーたちのいる荒野より遠くに、巨大な建造物がそびえ立っている。
「確かカラハ・シャールの近くだよな」
エルを預けているのはカラハ・シャールなので、カラハ・シ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ