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剣聖龍使いの神皇帝
第2巻
冥王と魔女との記憶
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俺はまた前世の夢を見ていた。フラガのではなく、シュウ・サウラの時の夢だ。窓の外では、吹雪が荒れ狂っている。この地方では一年中、空が晴れる日はない。あたかも、永劫に閉ざされた極寒地獄の如く、そんな不毛な土地に冥王の居城がある。石造りの部屋を深々と冷気が蝕み、この空気の中では暖炉の火すら弱々しく薪の爆ぜる音はどこか物寂しい。絨毯すら凍てついたようで、これでは石床と変わらない。寒さが針となって肌を刺し続ける。そんな拷問部屋のような場所が、冥王の執務室である。小鳥の囀りなど望むべくもなく、虚ろに鳴り響く吹雪の音のみ。吐く息はもう真っ白となり、棺桶のように冷え切った執務椅子に腰かけ、冥王は古の書物に読み耽る。独り、ではない夢でもある。

「寒いわ・・・・」

足元から静乃の声が聞こえた。蜜のように甘く、羽毛のように耳元をくすぐる、艶めいた声。冥王の膝にしなだれかかるように寝そべる、長い黒髪である静乃。冥府の魔女と呼ばれた静乃の前世ではあるが、書物を読んでいるがしっかりと彼女の表情が見える。凍えていては、震えているのが直に伝わってくる。

「もっと温かい場所に居城を移しましょう?ねえ・・・・シュウ・サウラ」

冥府の魔女は、夢の中では冥王シュウ・サウラと呼ぶ。三つある内の二つ目で、三つ目は創造神黒鐵の記憶を持っているからだ。

「ここも肥沃な穀倉地だったよ」

冥王は本を読みながら、上の空を装って冥府の魔女と会話を続ける。

「ええ、そうね。十年前はそうだったわね・・・・」

冥府の魔女は膝に頭を載せたまま、子供が甘えて気を引くように、皮肉を使った。

「・・・・あなたが、禁じられた呪法を使う前は」

何と言われても、冥王は本から顔を上げようとしない。冥府の魔女は更に気を引こうと言葉を重ねる。

「あなたがたった一つの呪法でこの国を氷の地獄に変えて、何万もの命を奪って。でももっと多くの人々が救われて。私だってその一人。まるで昨日の事のように思い出せるわ?だってほんの十年前の話だものね?」

十年もの歳月を「ほんの」とそれも皮肉を効かせながら、しかしその時の事を思い返す冥府の魔女の口調はどこか幸せそうでもある。

「ねえ、シュウ・サウラ。我が君。愛しのあなた。この氷牢みたいな城で起居するのも、寒さに我が身を苛ますのも、一体いつになったら飽きてくれるのかしら?」

言葉を続けるその間もずっと膝を撫でてくる。愛おしそうにねだるようにしてくる。

「飽きるも何もない。世界の敵、秩序の破壊者、冥王と忌み嫌われる余には、格好の居城であろう?こここそ、らしいというものではないか」

「死ぬまでここで償い続けるという訳ね?あなたは本当にそういうのが好きね?」

「知らぬよ。余はただこの地が気に入っているだけだ」


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