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FAIRY TAIL ―Memory Jewel―
第1章 薔薇の女帝編
Story8 妖精の背徳
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薔薇の女帝(ローゼンエンプレス) “秘密の部屋”―

闇ギルド、薔薇の女帝(ローゼンエンプレス)にはギルドの魔道士達しかその存在を知らない、“秘密の部屋”と呼ばれる部屋がある。その部屋の艶のある黒いペンキで塗られた扉の向こうに彼女達はいた。
“秘密の部屋”に初めて入る者は、まず初めに部屋の光景に驚くだろう。部屋の内部は四方八方、どこを見回しても黒、黒、黒。大きな革製のソファ、高級感満載のふわふわのカーペット、傷一つないテーブルに、そのテーブルに置かれた花瓶と生けられた数本の薔薇までもが黒なのだ。
黒で覆われた部屋の中央で、ウェーブの掛かった長い黒髪に大きくスリットの入った黒いワンピース、頭と胸に黒い薔薇を飾って優雅にティータイムを味わっているのは、薔薇の女帝(ローゼンエンプレス)(おさ)、マリーナ・ファージュだ。紅茶が注がれたティーポットとティーカップまで黒なのは敢えて目を瞑っておこう。
その隣で金髪の巻き毛にロリータ調の黄色で白のフリルであしらったワンピース、フレームに黄色い薔薇の模様が描かれた眼鏡を掛けて足をぶらぶらさせながらビスケットを食べているのは、薔薇の女帝(ローゼンエンプレス)の魔道士の1人、モカ・バニティだ。ウェンディよりも年下の彼女だが、これでも立派な薔薇の女帝(ローゼンエンプレス)の魔道士である。

「モカ、どうしたの?可愛いお顔が台無しよ。」

マリーナが隣でビスケットを食べているモカの顔を不思議そうに覗き込む。
さっきからモカは脹れっ面をしたままなのだ。ビスケットのカスをボロボロと膝の上に零しながらモカは口を開いた。

「だって、皆モカを置き去りにして妖精(ようせい)の殲滅に行っちゃったんだもん。普段は戦わないエミリアとアイムまで・・・」

そこまで言うとモカは手に残っていたビスケットの欠片を口に放り込み呟いた。

「モカも、妖精(ようせい)の殲滅に行きたかったのに・・・」

どうやらモカは不貞腐れているようだ。
それを見たマリーナはティーッカップを受け皿に上に置くと、モカの頭を優しく撫でた。

「モカの気持ちは分かるわ。でもね、モカはこの後、“奴隷を石化させる”っていう、モカにしか出来ない大切な仕事があるんだから。」

そう。最近世間で噂になっている“見たものを石化させる魔法を使う魔道士”はこの幼い少女―――モカ・バニティの事だったのだ。

「モカにしか出来ないの?」
「そうよ。」

マリーナの言葉を嬉しそうにモカは鸚鵡返しで繰り返す。マリーナはモカの頭を優しく撫でながら、

「だから、ガマンしてね?」

優しく囁いた。
その言葉にモカは「うん!」と元気良く頷くと、ぴょんっ、とソファから飛び降りると扉に駆け寄った。

「どこ行くのモカ?」

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