暁 〜小説投稿サイト〜
【銀桜】4.スタンド温泉篇
第8話「考えるな、感じろ」
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

 淀んだ暗闇が広がる世界――あの世とこの世の境。
 完全なる虚無の中を銀時はレイに連れられて漂っていた。
【いいかい。絶対離すんじゃないよ】
 漂う二人はお互いの手をしっかり握っていた。
 あの世とこの世の境で離れ離れにならないためとはいえ、スタンドと手を繋ぐのは妙な感じだ。しかし今はそんなことを気にしているところではない。
 黄泉の門に飲まれてしまった双葉を探さなくてはいけない。
 だが何をどうしたらいいのか。銀時の焦りは増していく。
「ぐずぐずしてられっか。早く双葉を見つけねぇと」
【慌てるんじゃないよ】
「けどよ!」
【肉体は魂の器にすぎない。けどそれは現世に繋ぎとめられてるってことさ。いわば『因果の鎖』ってところかね】
「え?何それ?ブ○ーチ??」
【つまりね、肉体は現世のモノさ。だからその器に入ってる魂なら、まだこの境目の中をさ迷ってことになるんだ。今のあんたのようにね】
 溜息混じりにレイは真剣な眼差しで銀時に語った。
 そもそも人間は『魂』と『精神』と『肉体』でできている。そのうちの『魂』と『精神』が『肉体』に入ることで『生きる』ことに繋がる。普通なら肉体が滅べば『魂』と『精神』は、『器』から分離してあの世に昇天する。だが生きたまま黄泉の門へ飲まれた双葉はあの世にも行けず現世にも戻れず、この虚無の空間をさ迷っている状態だとレイは言う。
 かといってこのまま時間が経過すれば、双葉も自分達もあの世に引きずり込まれてしまう。
 そうなる前に彼女を見つけ出す。そして空間に一度裂け目を入れて、現世に戻らなければならない。
【私が案内できるのはここまで。後はあんたが探しな】
 あの世に繋がるギリギリの境目で止まって、レイは力強く銀時に言った。
「探すって……」
 辺りを見渡しながら銀時は戸惑う。
 見渡す限り何もないこの虚無の空間から、一体どうやって妹を見つけ出せばいいのか。さすがの銀時も途方に暮れた。
【兄貴のあんたなら、妹と『タマシイの共鳴』ができるはずだよ】
「タマシイの共鳴?……それってソウル○ーターじゃねぇか!」
【私は現世に繋がる空間の裂け目を作ってくるから、後は任せたよ】
 銀時のツッコミを無視して、レイは行ってしまった。


 一人残されてしまった。しかしここでもたもたしてる余裕はない。
 銀時は先刻の出来事を思い返した。
「アイツ……なんで……」
 あの時。
 黄泉の門へ飲まれる直前――双葉は自分から飛びこんだ……ように見えた。
 ただそう見えただけかもしれない。だがそんな風に思えて仕方ない。
 いつも冷めた態度で、誰とも距離を置いていた妹。
 けれど本心は誰かと関わりを持っていたいはずだ。
 レイから手渡されたトランプから、銀時はそう思う。
 なのに双葉は自分
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ