4部分：第四章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第四章
ワインとチーズが二人の前に出される。グラスに白い液体が注がれる。
「ルルドの白よ」
「これがですか」
エリザベートはその白ワインを眺めながら応えた。ルルドはフランスの一地方である。穀倉地帯でありワインでも名の知られた星系なのである。
「ええ」
クレスパンはグラスを持ちながら頷いた。エリザベートもそれを受けてワインを手に持つ。
「まずはね」
「はい」
杯を打ちつけ合った。そしてそのワインを口に含む。
「どうかしら」
「かなり甘いワインですね」
まずはそれに気付いた。
「こんな甘いワインははじめてです」
「ルルド産はね、そうなのよ」
クレスパンは優しげで気品のある笑みのままそれに答えた。
「甘くて飲みやすい」
「はい」
「主人も好きなのよ」
「クレスパン侯爵もですか」
彼女の夫である。だから彼女は普段はクレスパン侯爵夫人と呼ばれているのである。
「今はね、ちょっと飲めないけれど」
クレスパンはそう話して少し寂しげで悲しい顔になった。夫が怪我をしたのを悲しく思っているのだ。
「傷が癒えたらまた二人で飲みたいわね」
「その為にも」
「この戦いを乗り切って」
「はい、ジャンヌ＝ダルクの加護を信じましょう。オルレアンの少女を」
「それだけかしら」
「！？」
クレスパンのその言葉に一瞬であったが動きを止めた。
「あの、それは」
「ワルキューレもいる筈だけれど」
エリザベートに顔を向けて言う。グラスとワイン越しにエリザベートの整った顔が見えていた。それはクリスタルとワインの中で不思議な美しさを見せていた。
「ワルキューレは何をしてくれるのかしら」
「オルレアンの少女に加護を」
エリザベートはそれを受けてこう言った。
「信じる神は違いますがエウロパの為に」
「そして第一七五艦隊の為に」
「戦ってみせます」
「期待させてもらうわ」
「わかりました」
二人は決意を見せ合って杯を重ねた。戦いの前の美酒であった。それが終わった時第一七五艦隊の司令部に偵察に出していた艦艇から報告があがってきた。
「第四七二艦隊を発見しました」
「無事だったのか」
「いえ」
だが無事かどうかはすぐに否定された。
「無事というにはこれは」
「どういった状況なのだ？」
クレールはその艦艇の艦長に問うた。
「第四七二艦隊は」
「まず数は半分もありません」
「半分もか」
「はい、そして残っている艦艇も殆どが損傷しています」
つまり戦力としてはもう成り立っていないということであった。
「中には動いていることすら不思議なものも。これではもう」
「よし、わかった」
クレールはそこまで聞いたうえで頷いた。
「ではそちらに向かう。いいな」
友軍を救出すること
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ﾍﾟｰｼﾞ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿ｻｲﾄ〜
利用規約/ﾌﾟﾗｲﾊﾞｼｰﾎﾟﾘｼｰ
利用ﾏﾆｭｱﾙ/ﾍﾙﾌﾟ/ｶﾞｲﾄﾞﾗｲﾝ
お問い合わせ
2024 肥前のﾎﾟﾁ
しおりを解除