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Bistro sin〜神の名を持つ男〜
黒への一線.1

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ここは、街の外れにある小さな隠れ家のレストラン。
17時〜22時までの5時間、その店はお客様をおもてなししている。
22時〜0時まで、店員たちは食卓を囲んで様々な話をする。
その日の店の出来事や、様々な世間話を。
或いは、従業員以外は知らないような秘密の話を…

とある火曜日、その日も相変わらず客足は多いとは言えるものではなかった。
19時頃、ディナータイムではあるが店内には一組の老夫婦が食事をしているだけだった。

静けさが広がる店内に、カランカランと来客を告げる扉の鐘の音が響き渡った。
やって来たのは古田だった。

「いらっしゃいませ。」
いつものように、賢太郎は出迎えた。

「やっぱり今日もお客さん少ないですね…。」
「はい…でも逆に考えれば、その分一人一人にいつも以上に集中して接客ができますから。」
賢太郎がそう言うと、古田は少し複雑な顔をして
「こんなに素敵なお店なのに…」
と言った。
すると、平泉がやって来て言った。
「余り大勢来ないからこそ、隠れ家でやっていられるのかもしれませんが。古田さん、どうぞいらっしゃいませ。」

古田は席に着くと、いつものようにメニューをジーッと見てから
単品の料理を幾つか頼んで小一時間ほど過ごした。

帰る時、平泉が古田に言った。
「古田さん、明日私たちの新しい料理のメニューの試食会をするのですが、お一人お客様からもご招待をと思っていて、よろしければいかがですか?」
平泉が笑顔で誘うと、古田は即座に返事をした。

こうして翌日の水曜日20時、古田は定休日のBistro sinへと訪れることになった。
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