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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
異聞 第四次ティアマト会戦(その7)
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い。キルヒアイスは必ず親友だと答えてくれる、分かりきった事を何をうじうじと悩んでいるのか……。分かりきった事なんだから質問なんてする必要は無い、そうだよな、キルヒアイス……。

「リメス男爵の事件はルーゲ伯爵にとっては予想外の事だったのだろう。あの一族の相続争いがカストロプ公に利用されるとは思わなかったに違いない。コンラートが殺されてルーゲ伯はカストロプ公が背後に居る事を知った。そしてキュンメル男爵家を救うべく慌てて動いた、そんなところだろうな」
フレーゲル男爵が水を飲んだ、そして大きく息を吐く。

「例の事件の後、ルーゲ伯は司法尚書を辞任している。ミューゼル大将、卿はどう思う?」
「責任を取った、そういう事だろう」
俺の言葉にフレーゲル男爵は低い声で笑った。明らかに嘲笑だ、ムッとして睨みつけると向こうもこちらを睨んできた。

「馬鹿か、卿は」
「何だと!」
キルヒアイスの前でお前に馬鹿なんて言われたくない。
「よく考えろ、ただの辞任ではコンラート・ヴァレンシュタインは浮かばれまい。卿なら仇も取らずに辞任するか? 仇を取るには司法尚書で有った方が有利なはずだ」
「……確かにそうだが……、証拠が無かったからではないのか」

俺の言葉にフレーゲル男爵が首を横に振った。
「証拠が無ければ証拠が出るまで捜査するか、あるいは別な事件で追い詰めるか、やりようは有る。しかしルーゲ伯は辞任した……。おそらくはカストロプ公を処罰できない何かが有るのだ」
「……処罰できない何か……」

一体何だろう? 証拠が無かった、或いは不十分だった、そういう事ではないのか? 嫌な感じがした、得体のしれないものを掴んだ様な感触だ。キルヒアイスなら分かるだろうか? キルヒアイスに視線を向けた。暗い表情をしている、何に気付いた?

「キルヒアイス?」
「……ラインハルト様、これは推測ですがリヒテンラーデ侯がルーゲ伯を止めたのではないでしょうか。ルーゲ伯の辞任はそれに対する抗議の辞任だった。そうは考えられませんか?」
「なるほど、抗議の辞任か……、しかし国務尚書が止めた理由は何だ? どうも分からん」

フレーゲル男爵が今度は低い笑い声を上げた。癇に障る笑い声だ。俺が分からない事が楽しいらしい。
「何が可笑しい」
「別に楽しんではいない」
「?」
「この一件、伯父上に話した。もしかするとリヒテンラーデ侯の弱みを握る事が出来るかもしれぬからな」

他人の弱みを握ってそれを利用する事しか考えない。ますますこいつが嫌いになった。
「伯父上はリヒテンラーデ侯に会った。その後、私にこう言った……」
「……何と言った」
フレーゲル男爵がニヤリと笑う。こいつの笑顔は狂相だ、悪意が滲み出ている。根性の悪さがそのまま笑顔に出るのだろう。

「以後
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