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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第21話 君が為
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に迫らんとな――唯依、今日はどうして来たんだ?」

「理由が無いと来ちゃだめですか…?」
「ふっ理由がないと来られないのがお前だろ。―――お前は甘えるのが下手くそだからな。」

 完全にお見通しという奴だった。前からやや見透かされ気味なところはあったが、今回は完璧に白旗を上げるしかない。

「……篁の家がどういう家か、忠亮さんは御存じでしょうか。」
「ああ、よく知っているよ。―――今がどういう状態なのかもな。」

「はい……篁に連なる者たち全てを守る義務が私にはあります。ですが、今の私ではそのお役目は果たせない。
 また、欲に飽くなき者どもにとって私の身はこの上なく好都合なものでしょう。」

 摂家直系の血筋、譜代武家の家格、膨大な資産。
 確かにどれを取っても、欲を持つ者にとっては魅力的だ。

「そして、その簡単な解消法は適当な人間との婚姻。」
「知っていたのですか!?」

「考えるまでもない、昔からよくあることだ―――可能性の提唱なんぞガキの妄想だ。」
「はい……」

 人には生まれや環境、立場がある。その中で己が対峙する運命と戦わなくてはならない――無限の可能性、そんなものはない。
 人は何時だって、各々の運命と対峙する宿命を持っている。その宿業から逃れる事は絶対に出来ない。


「その婚姻、お前は不服なのか?」
「分かりません……ただ、篁の事情に引っ張り込んでしまうのが申し訳なくて、私に何かできないかと―――」

「それは本人に確かめるしかないな――だがな、伴侶を選ぶのならその人間を殺す気でいろ。それが武家に生まれし者の責務だ。」
「分かっています―――だけど!!」


 悲痛な叫び、嫌なのだ苦しいのだ。自分のせいで誰かが傷つくのは、誰かが死ぬのは。
 誰もが笑って往ける世界なんて御伽話だ。空想の世界でしかありえない。そんな物語を信じれるほど盲目暗愚になれればどれ程楽だろう。

 人は誰かを傷つけずには生きていけない、それに気付かないほど愚かにはなれない。

「そうか、ならば(オレ)から言うしかないか―――」
「え……!?」

 不意の言葉、ただ驚きの声を返すしか出来なかった。そんな自分に彼はそっと告げた。

「唯依、(オレ)はお前のために死のう。」

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