暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
圏内事件
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れない。
 マサキは背中を鉄柵に乗せ、頭をその向こう側にぶら下げた。
 最悪の気分だ。このまま自分の身体ごと、何もかもこの空に投げ捨ててしまいたいくらいに。

「マサキ君」

 幾分軽くなったようなエミの声。同時に左手をひやりとした感触が包み込んで、マサキは首を跳ねさせた。

「行こう? もう、大分遅くなっちゃったし」

 すると、先ほどよりも数歩分近いところにエミの顔。暗くてよくは見えないが、少し紅潮しているようにも感じられる。彼女は一度にこりと微笑むと、そのまま手を引いて歩き出した。

「んな……。はぁ……」
「あ、ごめんなさい……。嫌、だった?」
「まあ、感心はしない」

 マサキは繋がれていた手を解くと、その手をポケットに突っ込んで歩き出した。流石にこの状況で投身自殺を図れるほど、マサキは強心臓ではない。

「そういえば、明日はご飯作れなくなっちゃったね……。代わりにモーニングコールでもする?」
「ご自由に。掛ける電話がどこにあるかは知らんがな」

 答えつつ、マサキは真っ暗の天蓋を仰ぎながら、ポケットの中で左手を気持ち悪そうに動かしていた。……全く、変な邪魔が入るところまで、あの時と同じじゃなくても良かっただろうに。

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