第十四章 水都市の聖女
第七話 戦いの始まり
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「アーチャーッ!!?」
驚愕の声を上げ士郎は目を覚ました。
「―――っ、ここは……」
簡素なベッドの上で上半身だけを起き上がらせた士郎は、全力疾走した直後のように全身を汗で濡らしながら息を荒げている。状況が掴めず混乱しながらも周囲を見渡した士郎は、見慣れぬ光景に訝しむように眉根に皺を寄せた。
「監禁―――ではなさそうだな」
周りを見渡した士郎はそう口する。場末の安宿のような板張りの部屋。衛宮士郎の事をある程度知っている者がいれば、こんな場所に閉じ込めようとはしないだろう。例え壁が“固定”等の魔法で強化されていたとしても、元が木材であるならばその強度は程度が知れる。最低でも鉄格子と石壁の部屋を用意しておかなければならない。
だが、目が覚めれば見知らぬ場所にいたということが、士郎が混乱している要因ではなかった。
そう、目が覚めた後の事ではなく、その前―――あの不思議な―――否、奇妙な体験。
「……夢、なのか?」
それが一番まとも答えだろう。
自分はベッドの上にいて、先程目が覚めたばかりであるという点からしても。
しかし、だからといってアレがただの夢であったとは到底思えない。あの場所で感じた匂い、味、感触、痛み―――あらゆるもの全てが現実的であった。唯の夢だと断じるには、流石に無理がありすぎた。
あの生々しさは夢ではありえない。これまでの様々な経験からしてアレが夢ではないと分かる。だが、それならばアレは一体なんだったのか……。
幻覚や幻術とは違うと断言出来るからこそ、もしや過去にタイムスリップしたのではと、そんな馬鹿な考えさえ浮かんだのだ。
夢だと断じるには余りにも現実的に過ぎており、現実であると断じるには余りにも不可解に過ぎる。
夢でも現実でも、何かの証拠があれば―――。
「―――っ」
士郎はハッと何かを思い出すと自身の胸の上に手を当てた。もし、アレが夢でもなく真実現実であったとしたら―――この胸当ての下にはルーンが刻まれている筈だ。“リーヴスラシル”というルーンが。
「……アーチャー」
確かめるようにあの男の名を呼ぶ。
あの時、最後に残った意識が聞いたのは、懐かしさすら感じるあの男の名前であった。
李書文から致命的な一撃を受けてからおかしくなった。自分が自分で無くなっていくかのような感覚。意識が身体から離れ、自分の意思とは関係なく動く身体と声。身体が乗っ取られていくかのようでありながら、何故か焦りは感じなかった。当事者から第三者へと変わりながらも、どうしてか違和感は感じていなかった。
―――解析開始―――
「―――異常は……なし、か」
胸に手を当て呟く。自身の身体を調べるも、異常
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