暁 〜小説投稿サイト〜
イリス 〜罪火に朽ちる花と虹〜
Interview13 アイリス・インフェルノ
「コドモ扱いしないでーっ」
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 いざトリグラフ市立図書館に入るなり、レイアは脇目も振らずカウンターに行き、

「今から遡って1年分の新聞のバックナンバーを閲覧させてください」

 と、司書に頼んだ。


 司書が数百部はあるであろう新聞を台車に載せて持って来てから、レイアは凄まじいスピードで新聞をチェックし始めた。
 左から右へ読み終わった新聞を積み上げていく。もはや速読だ。
 ルドガーとエルは呆気に取られて見ているしかなかった。

 全ての新聞を読み上げたレイアは、溜息たった一つ。みじんも疲れの色を見せなかった。

「何か、分かったか?」
「うん。どうもこの分史世界、断界殻(シェル)がなくならなかった場合のエレンピオスみたい。リーゼ・マクシアには入れないよ」

 レイアはあっけらかんと答えた。

「ど、どうして」
「今日の新聞は正史世界の日付と同じだったから、時間軸はわたしたちの世界と同じでしょ? だったら1年前には断界殻開放が大ニュースになってるはず。でもそんな記事なかった。だからここは、まだ断界殻が割れてない、隔てられたままのエレンピオスだと思うの。それならルドガーのGHSが使えなくなったのにも納得いくし」
「え?」
「多分、時歪の因子はリーゼ・マクシアにあるのよ。断界殻の向こう側のね」
「あっ」

 言われて、ルドガーも意味を理解した。

「どーゆーこと?」
「断界殻を破ってリーゼ・マクシアに渡らない限り、わたしたちは正史世界に帰れないってこと」
「そんなのこまる!」

 エルが身を乗り出した。大声を上げたので閲覧室の利用者が訝しげにこちらに注目した。
 ルドガーは慌てて「しーっ」とエルに言いつけた。エルも分かったようで、慌てた様子で口を塞いだ。

「一旦出ようか」

 新聞のバックナンバーを台車に再び戻してから返却し、ルドガーたちは図書館を出た。

 すると、ルドガーたちが人の少ない場に出るのを待っていたかのように、宙に紫の立体球形陣が結ばれ、中からイリスが舞い下りた。

「断界殻の突破には、考えはあって?」
「うーん」

 ルドガーは腕を組んだ。リーゼ・マクシアへの行き方。マクスバードもシャウルーザ越溝橋もない、そもそも異次元にある異世界。

「ここはイリスに任せてもらえないかしら?」
「イリス、断界殻破れるの!?」

 レイアが元からまんまるな目をさらに丸くした。

「やったことはないけど、今のイリスにならできる。1000年前までのイリスじゃない。心配しなくても誰も傷つける方法じゃないわ。イリス自身も」

 優雅に銀髪を肩から払うイリスは、確かに自信に満ちているように見えた。おまけにイリスが我が身を傷つける方法でないなら、願ったり叶ったりだ。

「分かった。頼む
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