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立派な魔法使い 偉大な悪魔
Prologue B
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はそれを見て呆れた声を出す。

「いくらなんでも昼の1時に閉店は早すぎるだろ。せっかくお前さんに仕事持ってきてやったのによぉ、つれねぇな」
「今日は気が乗らないんだよ。それに俺がハッピーになる仕事を最後に寄越したのはいつだ? 最近はつまんねぇ仕事ばっかりだ。確か前はバイク修理だったな。で、今度は子猫でも探すのか? 俺はごめんだね。つまり他をあたれってこった」

 ダンテが言ったように、エンツォが仕事の話を持ってきたと思っても、ここ最近は悪魔が絡まない合言葉なしの“つまらない仕事”が殆どだ――もっとも、ダンテの基準でつまらないだけで、そこいらの便利屋ではとても手に負えないものが多いが。
 ダンテも、一応エンツォの顔を立てるために何度も嫌々かつ渋々ながら引き受けていたが、もう引き受けるつもりはないようだ。
 しかしエンツォは、ダンテが必ず仕事を受けるとわかっていた。なぜなら今回はいつもとは違うからだ。

「確かにいつもはお前さんからしたらつまんねぇかもしれないが、今回は大物で――」

 エンツォは勿体ぶるように言葉を切った。そして口角を上げて続ける。

「――合言葉付きだぜ?」

 それを聞いたダンテの雰囲気が一変した。顔に乗せた雑誌を机へ放り、投げ出していた足を降ろす。そしてエンツォを見た。先程までの怠惰な目ではなく、まさしく狩人の目で。

「おいおい、そいつを先に言えよ! 合言葉ありならいつでも大歓迎だ」

 ヤバイ仕事ならダンテはモチベーションが上がる。さらに合言葉付きとなれば余計にだ。

「へへっそうこなくっちゃあな。よしっ、こいつが狙い(ターゲット)だ」

 エンツォは一枚の写真をカバンから出してダンテの前に放る。
 ダンテがつまみ上げて見たその写真には、10歳くらいに見える金髪の女の子が紅茶をすすっている姿があった。これを見てダンテは苦い顔を浮かべる。

「……エンツォ。おまえこういう“子猫ちゃん”と遊ぶ趣味があったのか? まぁ趣味ならなにも言わないが……」
「何勘違いしてんだ! そんな趣味はねぇよ。俺には妻も娘もいるんだぞ」
「間違えて自分のコレクションだしちまったんだろ? 気に病むなよ、黙っておくさ。で、本当の写真は?」

 からかいながらダンテは写真をエンツォへ投げて返した。だがエンツォは返された写真を指で軽く叩きながらため息混じりに口を開いた。

「正真正銘こいつが今回のターゲットだ。確かにこんななりだが、かなりの大物らしい。下手な大悪魔なんざ一蹴するほどのな」
 そう言うとまたエンツォは指で写真をスライドさせて、ダンテの前まで写真を持って行った。ダンテは写真を再び手にとる。先程と違ってふざけた様子もなく、じっと写真を見つめていた。

「わかったよ。それでこの“子猫ちゃん”
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