暁 〜小説投稿サイト〜
炎髪灼眼の討ち手と錬鉄の魔術師
”狩人”フリアグネ編
七章 「夜に二人」
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 夜、帰宅した俺はベッドに座り込んで一人悩んでいた。
 いや、悩むって表現は適切じゃないな。正確には考え込む……だろうか?
 無論の事だが、内容は今日の戦闘の顛末についてである。

 結局、封絶内の破損部位は、誰一人犠牲を出すことなく修復された。万事が丸く収まって、俺としては嬉しい限りだ。
「本当に便利な魔術―――、じゃないな。自在法……か」
 内容としては、そう難しい事ではなかった。範囲内を外界から切り離し、破損部位を修復……と言うより、巻き戻しただけだ。
 そうは言っても、そんな芸当は俺には到底出来る訳でもないから、正にシャナさんサマサマな訳だが。
 瀕死の重傷を負っていた池速人も、ちょっと寝違えたか? という程度まで持ち直せた。まぁ、重傷の原因の半分は俺なんだが……。
 だが代償に、俺自身の残り時間が削ったんだから、今回はこれで勘弁してほしい。何せもう俺には払うものがない。実際、支払い能力が不足していたから、不足分はずさんな修復作業という事になった。
 池の怪我は完治してないし、あれだけ派手にやられた教室は以前より確実に古びた状態で修復されてるし。
 だが、そもそも俺自身では修復作業すら出来なかったんだ。むしろ、この程度の被害で済んだ事は素直に喜ばないとな。うん、そうだ。そう思うしかない。無理にでもそう思う事にしよう。
 後ろばっかり見てても、前には進めないしな。上を向いて歩くんだ、俺。向き過ぎて足下をすくわれない程度にな。
「………よし!」
 立ち上がって頬を叩く。気合いを入れ直さないとな。部屋の中央に立って、少し長めの瞬きをする。
 ―――――さて。今は俺に出来る事をやるだけだ。
 さしあたって、当面の問題は戦闘時の立ち回りだろう。
 今回の戦闘でも夫婦剣――干将・莫耶の投影を試みはした。だが、正直あの投影速度では話にならない。
 具体的な所要時間は、投影開始から完了までに夫婦剣だと約五分。つまり五分の間、俺は素手の状態になる。
 聖杯戦争当時の経験―――と言うか希望的な観測で、俺の魔術は実戦では百発百中! なんとかなるさ! と思いたかったが、なかなかどうして上手く行かないものだ。
 今回は、近くにあった椅子の脚を強化して武器にしたが、これからはそう都合良くはいかないだろう。それこそあの頃の様に木刀を持ち歩くのも考えたが、そもそもあんな物は一般家庭には普通は置いていない。そもそも、衛宮の家が特殊なだけであって、道場なんて普通の家に備えられてないのが常識だろう。
 そうなると、調達自体も全部自分でやらなければならない。お隣のお騒がせ英語教師の家に頼む、なんて事ももう出来ないし。やっぱり旅行の土産物なんかじゃなくて、しっかりと実戦で使える物となると、割りとキチンとした造りの物じゃないとダメだ。
 戦闘用の木刀
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