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乱世の確率事象改変
変わらない黒
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ある想いを大切にしながら、わがままに自分の信じる道のみを突き進む。

 華琳様は突き抜けたその才能で見極めて、
 彼は類を見ない知識と異端な思考展開で読み取って、
 そうして世界を変えていく。

 ズキリ、と頭が痛んだ。

 白馬の兵達が作る戦場は綺麗な動きながらも容赦が無い。ただ一人の兵も逃がさないと、逃げる兵士であろうと殺しに向かう。背中を斬る必要性は無いのに、それほど憎しみが高まってしまっている。
 私に抑えられるか……否だ。止める気も無い。止めなくていい。戦で最低限の理性を保っているのなら、効率的な戦場を作れるのなら。
 彼らは黒にはなれない。あの人の作った大切な部隊には絶対になれない。だからこそ、私が補佐して灰色にしてしまえばいい。
 怨嗟は持って当然の感情。全てが正しい人間などいやしない。優しい彼に向けて、憎しみを覚えている者も沢山いるのだから。戦をしている以上は、誰もが他人から憎まれてしかるべきなのだ。
 何よりも負の感情は扱いやすい。
 一つ向ける先を示すだけで同調し、従ってくれる。共に戦った経験と、黒麒麟が白蓮さんの為に戦っているという思考誘導によって曹操軍は敵では無いと心の深い部分に刷り込まれる。白馬義従はこれで……白蓮さんをより深く求めるようになるだろう。
 そうして……幽州の大地は華琳様の為に戦った黒に信頼を置いて灰色に染まるだろう。

――この戦いが終わった時に、私があの人を嘘つきにする事によって。

 もう、彼は黒麒麟にはならなくていい。
 自分の為に、自分が描く世界の為だけに戦ってくれたらいい。
 華琳様に重荷を預けて、私に嘘つきの自責を預けて、そうすればあの人は救われる。これでもう、あの人は傷つかなくていいんだ。

 それなのに……どうしてこんなに不安なんだろう。この戦の、今この時に違和感しか感じない。
 きっとこの戦場があの人の作るモノとは全く違うからだ。それがこんなにも……寂しい。

――今のあの人も、戦ってるんだろうか。

 ふと思った。総力戦での戦というからには、彼はこの戦場に居る事になる。
 華琳様の隣で戦を見ているのか、春蘭さんや秋蘭さんの隣で戦っているのか、風ちゃんや稟さんの指示を受けて戦っているのか、季衣ちゃんや典韋ちゃんを守ろうと動いているのか……。
 考えた途端に、私の心臓がドクンと跳ねる。
 抑え付けられそうにない。胸の内から溢れる想いが大きすぎて、無意識の内に辺りを見渡してしまった。彼を探そうと目で追ってしまう。

――遠くから眺めているだけで、いいから。

 違うとしても、今の彼だとしても、一目だけでもその姿を見たくなった。
 苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。
 胸を圧迫する感情の奔流が、会いたいと喚き散らして泣き叫ぶ。

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