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水車の側で
第五章
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第五章

「そういうことだ」
「ええ、それじゃあ」
「すぐにですね」
「手榴弾を」
「各員手榴弾を持て」
 こう部下達に命じた。
「そしてだ。敵兵に向かって投げろ」
「了解」
「わかりました」
 すぐに返事が返ってきた。
「それならです」
「今から」
「戦争でものをいうのは」
 何かとだ。ピットは呟くのだった。
「数とだ」
「それとですね」
「装備ですね」
「その二つだからな。それがあればな」
 勝てるというのだ。それは彼はよく知っていた。何故ならだ。
「アフリカでもそれで勝ったな」
「あの時のドイツ軍は今よりも強かったですけれど」
「それでもですね」
「勝てましたし」
「それなら今も」
 アフリカでの激戦を考えればだ。今の戦いもなのだった。
 楽にさえ思えた。それでだった。
 彼等は落ち着いてだ。そのうえで手榴弾の信管を外してそうしてだった。水車、彼等が護りにしているそれを取り囲むドイツ軍の将兵達に対して投げるのだった。
 手榴弾はすぐに彼等のところでだ。爆発してだった。
 耳を覆っているドイツ軍のヘルメットが吹き飛び銃が投げ出される。それでだった。
 彼等はその数を大きく減らした。しかしそれでもだった。
 怯むことなくだ。まだ戦おうとしていた。それを見てだ。
 ピットはだ。いささか感嘆を込めてこう言うのだった。
「しぶといにも程があるな」
「そうですね。負けているというのに」
「装備も劣っていて数も減ったのに」
「まだ戦いますか」
 兵達の言葉にもだ。ピットと同じものが入っていた。
「ドイツ軍というのは」
「本当に粘り強いですね」
「全くです」
「この連中が味方だったらな」
 ピットはまだ窓のところに撃ち込まれるその銃撃を見ながら述べた。
「どれだけ楽だったか」
「そうですね。本当に」
「頼りになりますよね」
「こんな連中」
「少なくともヤンキー共よりはずっといいな」
 アメリカ軍のことだ。同盟国であり今も共に戦っている。しかしなのだ。
 両者の中は悪かった。実を言えばだ。共同作戦にしてもだ。何かあるとお互いにいがみ合っていた。アフリカ戦線以来常にであった。
 だからだ。ピットも今こう言うのだった。
「下品で威張り散らしているあの連中よりはな」
「そうですね。完全に自分達だけで戦争していると思ってますからね、ヤンキーは」
「俺達はただのおまけだそうで」
「スパム程にも役に立たないとか」
 缶詰の加工された肉である。連合軍はやたら食べている。
「言ってくれますから」
「そんな連中に比べればですね」
「ドイツ軍の方がずっと役に立ちますね」
「全くですよ」
 そんな話をしながらまた手榴弾を投げる。派手な爆発が幾つも起こりドイツ軍の将兵達は
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