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【短編集】現実だってファンタジー
虫を叩いたら世界は救われるか検証してみた・雷の章
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ある世界に住むある少年の異能が、一匹の虫をこの世界から別の世界へと送り出した。
その虫はある一人の哀れな男の身の丈に合わぬ野望を打ち崩し、その反動はさらに別の世界へと波紋を広げていた。



 =  同刻 欲界第二九八世界 『文明崩壊の世界:熱血類型』 =



「うあぁぁぁぁぁあぁぁぁああああああッ!!!」

カロリーを変換。筋肉を変換。熱を、熱意を、自身が胸の奥に抱える魂を、絞り尽くすことが可能なありとあらゆる力を、電力に変換。変換。変換。バチバチ、バチバチ、スパークが全身からはじけ飛ぶように溢れ出る。
この崩壊した東京を必死に生き抜く過程で手に入れたこの発電異能が持ちうる可能性の全てを集約する。この戦いで全てを失ってもよい。そう思えるほどに膨大で爆発的な雷光が天を貫き、ただ一人の人間に集約される。

最早それが人なのか、それとも雷の化身なのかも不明瞭になるほどの雷を飲みこんだその男は、ゆっくりと前に歩き出す。一歩一歩踏み出すたびにその身体から漏れ出した雷鳴が周囲を貫き、破砕していく。
その姿は、絶対的な破壊者。数多の激戦の果てに練り上げられた、地球最強の闘士。

そしてその男に悠々と向かい合う仮面の男が、不敵な笑みを浮かべた。
瞬間、まるで世界そのものを呑み込むような底無しの闘志が周囲を覆った雷を真正面から押し返した。
雷雲のように荒れ狂う雷神の覇気と、絶対王者然としたその男の覇気が真正面からぶつかり、行き場を失ったエネルギーが周囲を破壊する。

その決闘場の下に広がる広大な大地が真っ二つに裂ける。
空を覆っていた雲が真っ二つに裂ける。
二人の気迫が生み出す時空のねじれは、周辺空間さえも真っ二つにした。

天が、世界が二人を境に二分された。

雷神と化した男が、魔神とでも言うべきその男に向けて手を掲げ、光学兵器より鋭く燃える両眼を見開いた。

「決着をつけるぞ!天帝ッ!!貴様の覇道もこの決闘場(リング)で終わりだッ!!」
「汝との決着などとうに終わっておるわ……この天帝が世に生を受けた時点でなッ!!それをこれから教えてやろうではないかぁ……カシアァァァァァスッ!!!」

二人の長きにわたる戦いは、今まさに決着がつこうとしていた。
天下分け目の運命の大決戦。その理由は十数年前に遡る。



ある日、世界は唐突に終わりを告げた。
世界規模の地盤隆起よってこの地球に存在する全ての地形が変動し、人々はそれまでの文明の殆どを失った。そして僅かに生き残った人類にもまた苦難が降りかかる。

異能の力によってこの大隆起を予言していた古の一族が、人狩りを始めたのだ。
「翼の民」を名乗るその者達は自らを「地球の継承者」と名乗り、天帝・魔須禍羅諏(マスカラス)の指揮の下に一方的に人類へ宣
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