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エクシリアmore −過ちを犯したからこそ足掻くRPG−
第四十話 最果て
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『まさかここまで来る人間がいるとは』
「貴方が……マクスウェル、なのか」

 イバルの呆然としたような確認に、爺さんは厳かに肯いた。

『私が造り隠した途を通ってここへ来たお前たちは何者だ』

 ヴィクトルが最前列に立って、スーツから取り出した黄金時計をマクスウェルへ向けて掲げた。

「貴様らが仕掛けた悪辣なゲームの被害者、ミラ・クルスニクの末裔だ」




/Victor

『その時計からはクロノスの力を感じる……我が天地にないはずの力を、何故貴様は行使できる』
「さあな。強いて理由づけするなら、貴方に道を説くために、始祖ミラの霊魂が力を使えるようにしてくれたのかもしれないな」
『戯けたことを』

 戯言で大いに結構だ。始祖の名を出したのはマクスウェルの精神を揺さぶるためだからな。

『お主、氷のセルシウスか。何故黒匣(ジン)を持つ者の側にいる』

 老体の目がジランドの横に漂うセルシウスに向けられた。

『「私」を現世に蘇らせたマスターに立てる義理はあっても、貴方に立てる義理はないからだ』
『我らが滅びかけていると知ったその人間たちが、貪欲にもこのリーゼ・マクシアを襲ったと知ってもか』
『ああ。断界殻(シェル)を造った時、貴方は一部の精霊だけを連れて世界を閉ざした。貴方は多くの同胞をエレンピオスに置いて行かれた。いずれ黒匣によって滅ぶと知っていて、だ。そのような主に、私は仕えない』
『ほだされおって……』

 マクスウェルは蔑みを超えて憐れみさえ湛えてセルシウスを見やり、首を振った。

「今日は貴方に頼みがあって来た」
『頼み、だと』
「断界殻を開いてくれ。リーゼ・マクシア、エレンピオス両国の現状を改善するために」

 私にとっても、後ろの皆にとっても。これが今、最も強い想いであり意思だ。

『愚かな! 外には黒匣が溢れている。リーゼ・マクシアを滅ぼす気か』
「逆に聞くぜ」

 ここに来て初めてジランドが声を上げた。

「このまま引き籠ってエレンピオスを見殺しにする気か」
『滅ぶと知って黒匣を使い続けることを選んだのは、貴様らエレンピオスの民ではないか』


「俺じゃねえ!!」


 空気が震えた気がした。ジランド……

「俺じゃねえ。アルフレドでもねえ。ユースティアでもねえ。セルシウスでもねえ。なのにどうして何も選んでねえ俺たちが、大昔の先祖のツケを払わなきゃならねえんだ」

 ジランドは今にも発砲しそうな勢いだ。傍らのセルシウスが不安げに『マスター…』と零した。

『不服か。ならばここで貴様が持つその黒匣(ぶき)を棄てるがよい。エレンピオスの民が皆、黒匣を棄てれば滅びは回避できよう。選んだのが2000年前の人間であれ、私の言うことが
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