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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十八話 手向けの酒
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のか。……馬鹿な、何を考えている、敗けるとは敗けると思った時から敗けるのだ。指揮官は最後まで諦めてはならない。

『敵を崩し上手く行けば突破して逃げましょう。それが無理なら敵の混乱に乗じて撤退する。時間が有りません、準備にかかってください』
『はっ』
「はっ」
互いに敬礼を交わして通信を終えた。オペレータに主砲斉射の準備を整えるように旗下の艦隊に命じさせた。後は総司令官の命令を待つだけだ。

キルヒアイス総司令官は俺の後方に居る、側面を突くという事は俺と連動して正面の敵を崩すという事だ。責任は重大だ、上手く行かない場合は総司令官の撤退を援護する必要も生じるだろう。難しい任務になるな。溜息が出そうになったが慌てて止めた。皆が俺を見ている。

直ぐにキルヒアイス総司令官より命令が来た。同時に総司令官の艦隊が高速で動き出す!
「主砲斉射三連! ファイエル!」
光線が伸び敵陣に突き刺さると光球が湧き上がった。総司令官の艦隊は高速で迂回している。
「全艦隊に命令、突撃!」
如何だ、上手く行くか? 敵の注意をこちらに引き付けられれば総司令官の迂回攻撃は上手く行く、上手く行く筈だ。

艦橋から悲鳴が上がった。駄目だ、確かに敵は混乱している。しかし致命的なものではない、直ぐに混乱は収束するだろう。そして敵の一部隊が総司令官の艦隊に攻撃をかけている。こちらの狙いを見破ったという事だ。総司令官の部隊からたちまち損害が出た。

「総司令官に退くようにと伝えてくれ!」
オペレータが総司令部に通信をし始めた。キルヒアイス総司令官の部隊は高速とは言え巡航艦の部隊だ、決して防御力は高くない。このままでは何の意味も無く打ち減らされるだけだろう。一度撤退するべきだ。

「総司令部から返信です。攻撃を続行せよとの事です」
オペレータの声に艦橋が静まり返った。賭けろというのか? 敵の混乱に賭けろと。確かに今退いても次に如何するという問題が出る。時間も無い。ならば今賭けるべきか? しかし僅かな可能性だ、如何する……。ワーレン提督に相談、無理だ、そんな時間は無い。総司令官の部隊は損害を出しながら突き進んでいる。皆が俺の顔を見ていた。

「……攻撃を続行する。全艦に命令、前方の敵に向かって、突撃せよ!」



帝国暦 488年  9月 23日  ガイエスブルク要塞   アントン・フェルナー



ドアを心持小さく叩くと中から“どうぞ”という声が聞こえた。部屋に入るとエーリッヒは一人テーブルでワインを飲んでいた。しかも軍服を着ている。
「まだ起きていたのか」
「起きていた、報せが来ると思ってね」
「飲んでいるのか」
「まだ飲んでいない、グラスに注いだだけだ」

傍に寄って椅子に座った。なるほど、グラスにワインが注がれているが飲んだ
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