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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第108話 蒼の意味
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 蒼き女神がその容貌に相応しい冷たき光輝で地上を照らす。晴れ渡った無窮の氷空より吹きつけて来る風は冷たく、伸びてやや収まりの悪くなった俺の前髪を撫でて行った。
 まるで冷たい大気によって蒼い月の光輝が更に強められているかのような……、そんな気さえして来る夜。
 時計の短針と長針が再び出会うまで後五分。夜の静寂(しじま)に沈む街並みは、真珠の如き輝きが疎らに散らばる世界へと相を移している。
 そう。もっと浅い時間帯ならば氷空に瞬く宝石よりも強い星々――生の輝きに彩られる地上も、流石にこの時間となっては、その数を半数程度にまで減らしていたのだった。

「こんな所に居たのですか」

 転落防止用の金網に寄り掛かるようにして、空と眼下に広がる街の情景を瞳に映して居た俺。そんな、妙にたそがれた雰囲気の背中に掛けられる女声。
 尚、当然のように、誰かが近付いて居た事には気付いて居た。しかし、この声の持ち主が、俺に対して積極的に接触を持とうとする意味は分からない。

「流石に、似合わなかったかいな」

 振り返りながら、そう答える俺。地上の明かりもここには届かず、そして、このマンションの屋上に、今現在灯りの類は灯されてはいない。
 屋上への入り口から漏れ出る明かりに四角く切り取られた中心に立つ少女。春色の淡いパステルカラーのワンピース。丈の短いスカートの下は流石に素足と言う訳には行かなかったのか、黒のレギンスにより彼女のすらりとした両脚が外気に晒されるのを防いでいた。胸に付けた紺のリボンがアクセントと成った、如何にも女の子っぽい――。しかし、季節的に言うと明らかにひとつ前()の季節か、もしくは数か月先()の季節用の、かなり薄着と言う服装。
 そんな彼女……朝倉涼子を見つめて少しの笑みを漏らす俺。但し、この笑みは彼女に向けて見せた笑みなどではなく、この世界で彼女の従姉として共に暮らしている戦友に対する微笑み。
 そう、今年女子大生と成った彼女。その彼女の休日をそのままコピーしたかのような朝倉さんの姿に、一瞬、郷愁にも似た感覚を覚えたと言う事。

「こんな時間に、たった一人で夜空を見上げるなんて、武神さんって、意外とロマンチストだったんですね」

 そう話し掛けて来ながら、彼女は俺の隣。振り返った事により背にする事と成った金網に正対するような形で、俺の右側に立った。
 俺が屋上の入り口から漏れ出す光を視界に納めるのなら、
 彼女は地上にばら撒かれた宝石箱の中身と、冷たい氷空に浮かぶ女神の(かんばせ)を見つめる形。

 刹那、この季節に相応しい風が吹き付け、彼女の長く青い髪の毛を靡かせ、膝丈のスカートの裾をはためかせる。
 短い、そして、小さな悲鳴と同時に、少女らしい仕草で髪の毛と、そしてスカートの裾を押さえる朝倉さ
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