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【短編集】現実だってファンタジー
虫を叩いたら世界は救われるか検証してみた・結の章
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。生物が生きるのに必要な要素をいくつか兼ね備えた油揚げは、狐の胃袋に筆舌に尽くしがたい充実感を与えた。



狐が歓喜の雄叫びを上げる直前、猟師(マタギ)源八(げんぱち)は人生最後の大勝負を迎えていた。

(なんてデケェ図体だ……こいつ、間違いねぇ……例の穴持たずだ!もう冬も明けようって時期にこんな人里の近くをうろつきやがって……!!)

ヒグマ――しかも、全高3メートルに届こうかという規格外のサイズ。それが、猟師(マタギ)歴50年の源八の直ぐ近くに佇んでいた。
熊は基本的には冬になると冬眠する。だが、稀に冬眠に失敗して冬も雪山を彷徨う熊が現れる事がある。それが穴持たずだ。穴持たずは食料もない冬の雪山で過ごさなければいけないために殆どが死んでしまうのだが、稀にそうでもない固体が存在する。
空腹から極度に狂暴化し、かつ運よく餌にありつけた穴持たずは通常では考えられない体の大きさを得、更には食物に極度の執着を抱くようになる。過去にはこのような穴持たずが人を襲い殺すような事件も度々起きているのだ。

そして、目の前にいる熊こそがそれだ。この熊は既に同僚の猟師を何人か襲っている。幸いにも途中で逃げ出したために死は免れたが、親友の一人は未だに病院で枕を濡らしている。この上人里にまで入り込まれたら――次こそ死者が出る時だ。

既に地元の猟友会は警察と合同でこの熊を追い詰めつつある。
熊との戦いはとにかく存在を悟られないことが重要だ。のこのこ戦いを挑めばあっというまに爪で切り裂かれることになるし、逆に大勢で進めばすぐに勘付かれて逃亡される。仕留めるには、確実に追い詰めて確実に仕留める。それが重要なのだ。

源八は、年齢の事もあってそろそろ引退を考えていた。
だが、その引退前に飛び込んできた最悪のニュースこそが目の前の穴持たずだった。
猟師は自然に生きる動物の命を頂く仕事だ。間引きや危険な獣の駆除も使命ではあるが、必要ではない殺しはやらない。だが、今回の源八は完全に私怨でこの討伐に参加した。
後ろから同行する同僚たちが小声で話しかけてくる。

(源八っつぁん……頼むぜ。一発でやっちまってくれ)
(あいつ、昨日の討伐でしこたま鉛弾ぶち込んやったのにピンピンしてやがる)
(頭か、心臓。狙い撃てるのはアンタくらいだよ。『熊殺しの源八』ちゃんよぉ)
(わぁってるさ………だが、射角が確保できねぇ。まだだ、まだ……)

口では仲間の手前、平静を装った。だが、既に人の気配をどことなく察している穴持たずは周囲を警戒していた。気付かれてしまえば戦うにしろ逃げられるにしろまた事件が長期化する。こんどこそ死人が出るかもしれない。
この日のために1週間酒を断った。入念に計画を立て、とうとうここまでやってきたのだ。焦燥ばかりが年老いた源八の胸
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