暁 〜小説投稿サイト〜
IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十四話 毒
[2/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
調だった。だが何処かで自分に言い聞かせているような響きが有った。自分を追い込むな、エーリッヒ。
「勝算は上がったのではありませんか?」
空気を変えようというのだろう、リューネブルク中将が茶化すように問い掛けてきた。オフレッサーも“そうだな”と頷く。エーリッヒが“遮音力場を使います”と言った。オペレータ達には聞かせたくないか。

「勝利の定義にもよります。向こうの大義を否定し正当性を喪失させるという事なら勝ちました。今回の一件、そして例の一件でリヒテンラーデ・ローエングラム連合が権力欲、野心から貴族連合を反逆者に追い込んだという事が明確になった。たとえ戦争に負けても貴族連合が一方的に悪という事にはならない。滅んで当然という事にはならない」

「そしてリヒテンラーデ公とローエングラム侯、例え彼らが勝者になっても長続きはしない。いずれは滅ぶ……。帝国は混乱するな、新たな秩序が生まれるまで混乱する。私がした事は帝国を徒に混乱させる事か……。馬鹿げているな」
エーリッヒが自嘲した。何処かで虚ろな響きが有った。かなり落ち込んでいる。

「卿が勝てば良いではないか、そうなれば混乱はせんだろう」
オフレッサーの問いにエーリッヒが小首を傾げた。
「勝てば、ですか。オフレッサー上級大将、困った事に私にはラインハルト・フォン・ローエングラムが敗北するという事が想像出来ないのですよ。勝てるのかな、彼に」

皆で顔を見合わせた。エーリッヒは冗談ではなく本当に疑問に思っている。
「今度の一件でローエングラム侯から人が離れるという事は有りませんか? 誰もが彼について行く事に疑問、不安を感じると思うのですが。それに例の件も有ります」
リューネブルク中将の言う通りだ。かなり有利になったはずだ。

「そうかもしれません。しかしそうじゃないかもしれない。向こうは必ずこの内乱を権力闘争ではなく階級闘争として皆に訴える筈です。門閥貴族の横暴を訴え平民達の権利を確保する為には已むを得ない事だったと訴えるでしょう。そして今更降伏しても貴族達の報復から逃れることは出来ないと指摘する。上手く行けば離反は避けられる可能性は有ります。被害を受けたのは辺境の十億人だけなんです。帝国全体から見れば五パーセントに満たない」
皆が唸り声を上げた。

「それに例え全銀河が敵になろうともジークフリード・キルヒアイスがローエングラム侯の傍を離れる事は有りません。あの二人に勝つ? どちらか一人でも持て余しているのに? 至難の業だな、馬鹿みたいに犠牲が出るでしょう。ウンザリだ」
駄目だな、エーリッヒは落ち込む一方だ。俺も溜息が出そうになった。他の話題を提起するか。

「あの三人、オーディンに戻るようだがどうなるかな?」
エーリッヒが首を横に振った。
「どうにもならないだろうな。…
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ