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青い春を生きる君たちへ
第18話 青い春を生きる君たちへ
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青春を、それぞれ懸命に全うして、そこに自分だけの意味を見出していけばいい……誰よりも淀んだ青春を過ごしている自覚のある小倉は、一方で自分の青春もそう悪いものではないような気もしてきており、最近ではそんな事を考えるまでに至った。


《……春の甲子園、大会第3日の第三試合は、甲洋対帝東!東西の強豪校対決で……》


携帯ラジオの電源を入れると、アナウンサーのやや興奮気味な声が聞こえてくる。駅から降りてくる人の数も増えつつあった。小倉はベンチから立ち上がり、その人の波が向かっている方向へ、自らも歩き出す。その視線の先には、かつて憧れた夢舞台……阪神甲子園球場の威容があった。


そうだ、生きるんだ、謙之介。俺の分まで、ね。


不意に、田中の言葉が脳裏に蘇る。小倉は、強く頷いた。分かったよ。俺は、お前の分まで生きる。お前が俺に残してくれたあの一ヶ月……あの体験を、何度も何度も読み返しながら、お前の事を思い出しながら……お前という存在を胸に抱いて、生き続ける。


さようなら。……幸せになって、ね。


高田の声もした。幸せ……か。お前の言う幸せって、どんなもんなんだ?それを聞かなきゃ、俺にはどうしようもないじゃないか。何を目指したら良いか、分からない……
だから、次に会うときは、まずそれを聞くよ。振り返ってみれば、俺からお前に近づいた事って、一度も無かったよな。せいぜい、葉鳥に頼まれて、お前の家に行ったくらいだ。俺はお前が来るのを、待ってばっかりで……だから今度は、俺の方から行くよ。逃げるんじゃないぞ。……また一対一で、真摯に、誠実に、俺と向き合ってくれたら嬉しい……

甲子園の浜風が、ひゅうと吹いて、小倉の背中を押した。コートを着込んだ小倉の背中は、人混みの中に紛れて、やがて見えなくなっていった。



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これは、1人の少年の、つまらない青春の物語。
彼には彼の青春があり、あなたにはあなたの青春がある。
それらは全て等価値で、それでいて全て、異なる類の価値を持つ。

皆それぞれの青春を全うして欲しい。懸命に生きて欲しい。
このメッセージを特に、次の人々に伝えたい。









たった今、青い春を生きる君たちへ。






『青い春を生きる君たちへ』完


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