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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十三話 武器なき戦い
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ラム侯にエーリッヒが冷笑を浴びせた。侯だけではない、艦橋も凍り付いている。俺も含めて皆動けない、あの時もそうだったのか……。

「お前の真の姿を教えてやる。ミューゼルという名ばかりの貴族に生まれ多くの貴族達に蔑まれ馬鹿にされてきたがローエングラム伯爵家を継ぐなり十億人の弱者を踏み躙った男だ。自分が貴族だと認識出来て満足か? 十億人踏み躙る事が出来て楽しかったか?」
『違う、あれは……』
何かを言おうとしたが言葉が出てこない。エーリッヒが低い笑い声を上げた。

「勝つためか? 帝国を護るためか?」
『そうだ、私は帝国を護るために……』
「言い訳をするな! 見苦しいぞ!」
必至で言い募ろうとするローエングラム侯をエーリッヒが怒気も露わに叱責した。

「十億人を踏み躙って得た勝利をお前は何のために使った? 辺境星域のために使ったか? そうでは有るまい、リヒテンラーデ公と組んで五歳の幼児を皇帝に祭り上げ帝国軍最高司令官として軍の実権を握った。お前の出世と野心のために使ったのだ。否定出来るか?」
『……』
スクリーンからでもローエングラム侯の身体が小刻みに震えているのが分かった。

「傲慢で冷酷な野心家、弱者を踏み躙りその事を省みぬ冷血漢、しかもそれを認めようとしない卑劣漢、それがお前の真の姿だ。お前に他者を責める資格が有ると思うのか? そんな資格など無い、思い上がるな! 小僧!」
立ち尽くすローエングラム侯にエーリッヒが怒声を叩き付けた。

“やめて下さい”と制止の声が聞こえた。グリューネワルト伯爵夫人が蒼白になって嗚咽を漏らしていた。そして“もうやめて下さい”と何度も繰り返した……。





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