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不死の兵隊
第一章
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むを得まい。軍の動きを停止させよ」
 進軍を停止させた。
「スペイン軍や旧教の諸侯達が来たら迎え撃て。しかしそれ以外は」
「動いてはならぬと」
「ましてやその者達には手出しするな」
 これが厳命であった。
「命が惜しければな。それでよいな」
「はっ」
 ロシュフォールはリシュリューのその言葉に一礼した。
「わかりました。それではそのように前線には伝えます」
「陛下にはわしからお伝えしよう」
 この時の国王はルイ十三世である。本人はともかくその周りには謎がある人物である。あの鉄仮面の話には間違いなく関わっているというのがもっぱらの噂だ。
「それでは前線は頼むぞ」
「わかりました」
 こうして方針は決まった。リシュリューはこの日から政務の合間をぬって書斎に篭るようになった。その間前線はロシュフォールが伝えたように動くことはなかった。これはこの戦争に参加している銃士隊についても同じであった。
「あの枢機卿様の御言葉らしい」
「聞きたくはないな」
 国王直属の彼等にしてはそうした話であった。青い服を戦場に映えさせて苦々しい顔をしていた。
「動くなか」
「奴等にも」
 彼等は口を尖らせて言う。不平を露わにさせていた。
「スペインとか旧教の連中にはいいそうだ」
「旧教ねえ」
 なおフランスはカトリックの国である。何十年か前にサン=バルテルミーの虐殺で新教徒を大勢虐殺したこともある。ナント勅令により宗教的対立は解消されたがそれでもカトリックの国なのはまごうかたなき事実である。
「俺達もそうなんだが」
 やはり彼等もそれを言う。
「カトリック同士で争うのもな」
「むしろあの連中の方がな」
「それは言うな」
 しかしここで背の高い奇麗な髭の男が彼等を制止した。
「言っても仕方ないことだ。我々は命令に従うのみ」
「そうだな、アトス」
「その通りだ」
 ここでもう二人出て来た。紅のマントを羽織った大男と茶色の髪の白面の美男子であった。彼等の名前をポルトス、アラミスという。アトスと合わせて三銃士である。
「ここは枢機卿殿の命に従うしかない」
「我等とて不本意だがな」
「その通りだ。それに」
 アトスは二人の同僚達に対して述べる。
「実際に戦っても仕方ない」
「全くだ」
「忌々しいことだがな」
 二人はアトスのこの言葉にも頷くしかなかった。実際にアラミスは苦虫を噛み潰した顔になっている。

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