空白期 中学編 01 「始まりの朝」
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冬も終わり桜が咲き始めた頃、俺は早朝いつものトレーニングコースを走った。小学生の頃から行っていることなので大した疲れはない。むしろ眠気が覚めて、気分としては良いといえる。
――これまでと大差のない朝……だけど変わってしまったこともあるんだよな。
帰宅すると同時に、かすかに食欲をそそる香りが漂ってくる。それに導かれるようにリビングへ入ると、キッチンには髪をポニーテールにまとめている少女が立っていた。言う必要はないかもしれないが、白いエプロンを着けている。
「ん? 帰ってきたか……」
俺に視線を送りながら汁物を小皿にすくって味見している少女はディアーチェだ。なぜ彼女が俺の家のキッチンに立っているかというと、前にあった話が本格的に始動したからだ。
分からない人間のために説明すると、地球の文化に触れるためにこの家にホームステイして同じ中学に通うのだ。ディアーチェのホームステイが始まったのは今から1週間ほど前――春休みの半ばからだ。
知らない仲でもないし、何度もここには遊びに来て泊まることもあったから今では慣れつつあるけど……ホームステイ初日はさすがに緊張したよな。出会った頃と違って発育も進んでるから、一段と女の子らしくなってるわけだし。まああっちも似たような感情は抱いてたみたいだけど。
「何をぼざっと立っている? 食事はもうすぐ出来上がるのだぞ。貴様はさっさと汗を流してこぬか」
「あぁ悪い……ありがとな」
「ふん、別に礼には及ばん。我はここに厄介になっている身だ。自分にできる形で恩を返すのは当然であろう」
それはそうかもしれないが、中学生くらいの年代の少女が淡々と言えることじゃないよな。まあ昔からシュテルやレヴィの相手をして、そこにはやてとかも加わったからな。しっかりとした人間に成長するのは当たり前か。
そんなことを考えながら着替えを取りに行き、バスルームへと向かう。手早くシャワーを済ませた俺は、タオルで髪を乾かしながらリビングに戻った。テーブルには米をメインにした実に和食らしい食事が準備されている。
タオルを首に掛けながらいつもの席に腰を下ろすと、向かい側に座ったディアーチェが呆れた顔をしながら話しかけてきた。
「これから学校だというのに……髪くらいきちんと拭いてこぬか」
「別にいいだろ。時間はまだあるんだし」
「それはそうだが……貴様は真面目なようで、どこかしらで手を抜いておるよな」
「抜けるところは抜いておかないと身が持たないだろ。俺達の知り合いには面倒なのが多いんだから」
脳裏に過ぎった人物達に反論の余地はないと思ったのか、ディアーチェは「やれやれ……」と言わんばかりにため息を吐いた。気持ちは分からなくはないが……
「おいおい、大変なのはこれからだぞ」
シュテルやレヴ
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