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みらいいろ
絶望の中にある希望
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[9] 最初 [1]後書き
との接触で大きな音を立て、崩れ落ちた。

 既にアポリアは指1本動かせず、目には何も映らない。彼の死を惜しむ声も、その耳に届くことはない。機能停止を待つのみのアポリアはしかし、その胸中を希望で満たしていた。
 生前、オリジナルのアポリアは3つの大きな絶望を味わっている。幼くして両親を失い、成人した頃には恋人を亡くし、最後には荒廃した世界に1人残された。常人では命をも捨てかねない状況。それでもなお彼は諦めなかった。ゾーンたちと出会い破滅した世界の再生に心血を注ぎ、死後は3つの人格として蘇り彼の手足となっている。その人生は幸福とは程遠い。
 確かにアポリアの人生は波乱に満ちていた。しかし決して絶望に彩られてなどいなかった。彼のそばには常に希望があった。と言っても、厳密には少し違う。希望はただそこにあったのではない。彼はどんな絶望を味わおうとも希望を追い求めた。どれほどの時間がかかろうとそれを探そうとしたのである。
 アポリアが希望を手にしていたのは、幸運などによるものではなく努力の成果。希望は己の胸のうちにこそ存在していた。荒廃した世界の中、アンチノミー、パラドックス、そしてゾーンと出会えたことこそが希望の証。闇に濡れた世界を光で塗り替えようと誓い合った日、記憶の中の彼らは確かな絆で結ばれていた。それを思い出させてくれたチーム5D’sに、アポリアは感謝の念を禁じえない。
 ついに残った意識さえおぼろげになっていく。そんなアポリアに1つの懸念があった。それは友、ゾーンのこと。彼を残したまま逝くことが残念でならない。
 しかしアポリアは信じている。不動遊星が未来を切り開き、ゾーンが希望を取り戻すことを。苦悩に歪む仮面の下に笑顔が戻ることを、彼は信じている。それを見られないのが残念ではあるが、心配は要らない。かつてゾーンさえもその存在に焦がれた遊星。ここまで進化を果たし、今なお進化し続ける彼になら安心して任せられる。
 かすかな意識の中で友が救われることを祈りながら、アポリアは命を手放した。
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