暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語
■■インフィニティ・モーメント編 主人公:ミドリ■■
壊れた世界◆生きる意味
第六拾弐話 コハレタセカヰ
[4/4]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
り上げたが、その攻撃をミドリは右手で掴みとった。HPがぐっと減り、残り数ドットほどになる。しかし彼はHPバーに構わず敵の鎌を奪い取り、相手を切りつけた。何度も、何度も斬りつける。それを何十回も続けた後……砕け散ったのはモンスターの方だった。

「ははっ……勝った。勝ったよ、勝っちまった! こんなにあっけなく! ……なんだ、俺が参加してれば勝てたんじゃないか。一体俺は……なにをしていたんだ。クリアして消えるのが怖くて、ボス戦に参加しないだなんて! 俺の『生きる意味』は何だったんだ! こんな終わり方ほど、意味のない人生があるかよ!!」
 ミドリは高笑いした。ついに紅玉宮までもが崩壊を始める。床が抜け、壁が壊れ、全てが黒い海水へと吸い込まれていく。世界が終わる直前、彼は手にした鎌で自らの命を刈り取った――





「――ッ、ミドリさんッ!」
 ……誰かの呼ぶ声が聞こえる。視界が次第に明るくなり、彼は自分を覗きこむ少女の姿を見た。
「ミドリさんッ!」
「あー、うるさい。頭に響く」
「ミドリさん、大丈夫ですかッ!?」
「だから叫ぶなって、シリカ」
 ミドリはなんでもない風を装って、起き上がった。昨日死んだはずのシリカが自分を覗きこんでいる状況が理解できない。
「シリカ、お前なんでここにいるんだ? お前は九十八層のあの部屋で……」
「……ミドリさん、本当に大丈夫ですか? いま、最前線は九十二層ですよ」
「いきなりそんなこと言い出すってことは、変な夢でも見てたの?」
 少年が少し面白そうに言うと、少女は彼を睨みつけた。
「冗談言ってる場合じゃないです! あんな倒れ方して、ただ寝てたわけがないじゃないですか! ストレアさんも意味不明なこと言ってますし、ああもう、一体どうしたら!」
「……マルバ、お前二年前に怪我して以来喋れなかったはずじゃ……?」
「本当に何を言ってるんだい、ミドリ」
 ミドリは頭を振った。なんとなく事の全貌が見え始めたが、確信が欲しくて更に尋ねる。
「……おい、今年は2069年だよな?」
「なにそのでたらめな数字。2025だよ、2025年」
 ミドリはしばし考え、そして高笑いを始めた。
「あはっ、あはははははは!!」
「ちょっ、いきなり大声で笑わないでくださいよ、なんなんですか!」
「いやっ、これが笑わずにいられるかよ! だって、あんなおっそろしいゲームエンドが――」
 ――ただの夢だったなんて。それを確信すると、あまりの安堵感に涙が出てきた。
「笑ったり泣いたり、忙しい人だね。そろそろどういうことだか教えてくれないかな」
 マルバが呆れ返って言ったが、ミドリはそんな彼には構わず泣きながら笑い続けた。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ