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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第十三話  意義のある誤ち 意義のなき正しさ
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豊久を責め立てる。
――止めろ、大馬鹿者、お前は指揮官だ。部隊に戻り、嘲笑との戦争を行う必要がある。
自己憐憫などやっている暇はない。

顔を戻す努力をし、部隊へ戻った。
部隊の残存兵力は五十名にも満たなかった。猫は五匹しかいない。
 ――剣虎兵大隊、か。
本隊はまだ三百以上いた。それを撤退させたのだから格好がつかないのは当り前か。

冬野曹長も目を覚ましていたが、脳震盪を起こしたらしく、療兵曰く眩暈が酷く立たない方が良いらしい。
「西田少尉、杉谷少尉、我々は目的を完遂した。
これは少なくとも敗者としては最高の栄誉と言って良いだろう。
最後まで軍人としての見栄を張らなければならない。
特に武器を引き渡すまでは絶対に、だ」
皆、疲労の色が濃いながらも頷いた。

冬野曹長が負傷した為、最先任軍曹の権藤が砲兵らしい裂帛の号令を放ち装具の点検を行った。

そして冬野曹長達、重傷者を担がせる。
バルクホルン大尉は特に丁重に〈帝国〉軍に帰還する勇者として扱われる。
列の先頭に立った大隊長は無表情に歩む。
――嘲笑うか? 嘲笑いたければ嘲笑え。確かに俺達はお前達に勝ってはいない。
――だが俺達もお前達には敗けていない。
 
「第十一大隊、前進!」



この降伏交渉は〈皇国〉陸軍と〈帝国〉陸軍の間で北領において行われた最後の交渉であり。
書類上は、大協約に基づき帝国陸軍は北領においても降伏を全て受け入れた
と記されている。

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