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雲は遠くて
64章 信也と美結たちの正月
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て、
ニーチェよりも16年くらい長生きしているんだよね」

「あら、いやだぁ。わたし、すっかり勘違いしていたみたい。
ニーチェって、漱石のあとに生まれた人とばかり思っていたわ。
だって、ニーチェの哲学って、現代人にもすごく役立って、現代的なんですもん!」

 ちょっと恥ずかしそうに、美樹は信也に、そういって微笑む。

「ははは。全然、気にすることなんてないよ。しかし、美樹ちゃんの言うとおりだよね。
確かに、ニーチェの哲学って、現代的だし、いまだに最先端な気がするもんね」

 信也と美樹は、モリカワ・ミュージックの忘年会で、そんな歓談をした。

 夏目漱石とニーチェはほぼ同じ時代に生きていたが、
漱石は1867年生まれの1916年の死去で、
ニーチェは1844年生まれの1900年の死去で、
漱石はニーチェより20歳以上若く、ニーチェよりも長生きしている。

 信也のマンションのリビングの、40型のテレビでは、録画の紅白歌合戦をやっている。
ちょうど、サザンオールスターズの桑田佳祐たちが登場している。

「利奈ちゃん、大学入試のお勉強、がんばっているらしいわ」

 美結は、テーブルで向き合う、信也にそういって、微笑む。

 (あたた)かくしてあるウールのカーペットで、ひのきのローリビングテーブル(座卓)では、
寝転がってくつろげる。

 妹のことを想う姉らしい優しさが、最近の美結の表情にはあって、そのオトナの女性らしさが、
美結の美しさを、兄の信也でも心を奪われるくらいにしている。

「1月は、センター試験だもなあ。利奈ちゃんもちょっと大変な時期だよね。
でも、利奈ちゃんなら、だいじょうぶだよ」

「そうよ、利奈ちゃんなら、だいじょうぶよ、しんちゃん」といって、美結も明るく微笑んだ。

 元旦の朝には、信也の彼女の詩織と、美結の彼氏の沢口涼太の4人で、
下北沢駅北口から歩いて6分ほどにある下北沢神社に、初詣(はつもうで)に行った。

 信也は、この正月に、まだ未完成らしいが、1つ、ロック調の歌を作った。

ニーチェさんに(ささ)げる歌  作詞作曲 川口信也

あなたは すごい人ですね 自分を信じて
その時代の 価値観を転倒したんでしょう!
あなたの 身になって 想像してみれば
おれなんかには できることじゃありません!

あなたは たぶん 無欲な 心優しい人だったんですね
世間の 無理解や中傷にも 負けないで
信念 感性 考えたこと 感じたこと ()げないで
わが道を 歩くことを (まっと)うしたのだから

ニーチェさんの キーワード たくさんあるよね
超人 ツァラトゥストラ ルサンチマン ニヒリズム
でも オレの大好きなのは あなたの芸術論
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