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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章 群像のフーガ  2022/11
8話 反撃の意思
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ても、俺は《ディアベルの(もと)まで行くのを諦めた》のだから。
 それに、キバオウの腹の内は知れている。ベータテスターである俺を弾劾して、ここにいるパーティメンバーに《ベータテスターがディアベルを見殺しにした》と刷り込むことにある。そして、このレイドの中で絶大なカリスマ性を発揮した騎士の威光を利用して自身が新たなレイドリーダーとなり、討伐部隊を率いて勇猛果敢にボス戦を遂行し、さらにLAボーナスで得たユニーク装備を御旗に発言力を付けることにあるのだろう。彼自身がβテスターという推測は外れたものの、根底はほぼ的を射ていたということか。
 当初俺の予想していた通り、この男はベータテスターを憎んでいる。というより羨んでいるというべきか。ベータテスターの保有する情報を、装備を、金を、この男は羨み嫉んでいる。今思えば、だからこそあのヘイトスピーチで不当なまでの平等主義めいた発言が出たのだと考えられる。
 だが、この男は知らないわけではないはずだ。デスゲームとなったこの浮遊城の中で、楽をして何かを得られる事など探すことさえ困難であることを。難易度的なリスクを回避しているとはいえ、はじまりの街を踏み出したどのプレイヤーも等しく命を懸けて戦っていることを。ヘイトスピーチで述べた犠牲者の中に、βテスターの数も含まれていたことを………


「E隊、G隊、いつまでボサッと座ってんのや! 前線のC隊助けて、ほんでディアベルはんの仇討ったろうやんけ!」


 俺が言葉を失っている隙に、キバオウは有らん限りの声を張り上げて号令を叫ぶ。無理矢理にでも止めるべきだったのに、キバオウの発した『お前が見殺しにした』という言葉が枷となってそれ以上の言葉を掛けることもできなかった。それは同時に、間近でディアベルの死を目撃したキリトにも重圧を与えてしまっていた。暴走を止められる人間がいなかったのだ。
 士気を取り戻したE隊とG隊が立ち上がり、キバオウを筆頭に鬨の声を上げてボスに立ち向かっていったが、この行軍はあまりに危うい。恐慌状態にある前線を静めてまとめあげるならばともかく、このままでは前線の混乱に巻き込まれて立ち回りが成り行かなくなる。二組のPTでどうにかなるようにも思えない。あまりに打算的過ぎる………

――――そして、彼らがコボルド王に辿り着くより先に()()()の湧出が起こった。

 事前の情報では確認できなかったイレギュラーな湧出に加え、数は《ルインコボルド・センチネル》が二匹、《ルインコボルド・グラディエイター》が三匹の計五匹。出現数にランダム要素が現れたのか、何らかの規則性があるのかは不明だが、湧き数も変動している。湧きのタイミングはコボルド王のHPが四本目に差し掛かってからは時間経過に移行したと考えるのが妥当だろうか。グラディエイタ
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