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昼は天使、夜は悪魔
第五章
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なんだ」
「そうだよ。それでも御前」
 ここで彼はあらためて恵一の顔を見る。それで呆れたように溜息を吐き出すのだった。
「それでも変わらないな」
「何がだい?」
「のろけた顔のままじゃないか」
「そうかな」
「そうだよ」
 その顔でまた彼に言うのだった。
「全く。呆れたっていうか何かっていうかな」
「だってさ。本当に可愛いし奇麗で」
 これは変わらないのだった。やはり目をピンクのハートマークにさせている。その顔は全く変わらずにただただのろけが続いていた。
「天使でも悪魔でも。本当に」
「岩尾君」
 噂をすればだった。ここで。
「ちょっといい?」
「あっ、弥生さん」
 恵一は素早く声の方に顔を向けた。信じられない速さだった。
「何かな」
「今度の日曜だけれどね」
「うん」
 今の弥生は眼鏡をかけて三つ編みにしている。天使の顔だった。
「遊園地でいいわよね」
「うん、何処でもいいよ」
 相変わらずハートマークの目で彼女に応える。
「何処でも。本当に構わないから」
「そうなの。それじゃあまずはそこで」
「その次は」
「それはね」
 二人だけの話になる。皆はもう放っておかれた。それでも皆はそんな彼を見ながらも怒ってはいない。呆れてはいるが微笑んでこう言うのだった。
「まあそれでも」
「好きなのならいいか、あそこまでな」
「そうだな」
 何だかんだで恵一を暖かく見守っていた。天使と悪魔の顔の間でとろけそうになっている彼を。温かく見守っているのであった。


昼は天使、夜は悪魔   完


                   2008・5・12

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