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異なる物語との休日〜クロスクエスト〜
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「温泉旅館の無料チケット二枚組……? なんでこんなものくれるんだ……?」
「気まぐれだよ。僕は使わんからタダであげる」

 栗原清文は、にやにや笑いながら正面に座る悪友、天宮陰斗に問うた。

 「いいものやるから来なよ」、という彼の言葉に惹かれて、何年ぶりかになる天宮家にやって来たのが数分前。メロンパンとコーヒー(陰斗はリンゴジュース)片手に談笑している最中に、陰斗が手渡して来たのが、どこぞの温泉旅館の無料チケットだった、と言うわけだ。

「珍しいな、お前が何の見返りも要求しないなんて」
「たまにはそんなことがあっても良いだろ? 僕だっていつでもどこでも意地汚い訳じゃぁない」

 ふぅん、と漏らしながらも、清文は心の中でこの状況を疑わずにはいられなかった。

 天宮陰斗という人間は、あらゆる行動の根元に『自己満足』が来る存在だ。それは文字どおりの意味であり、『自己』が『満足』するための行動だ。

 つまりは、彼がなにか行動を起こすとき、それはこちらの利益・不利益関係なしに彼の利益になるのだ。

 そんな彼が、無償の善意で行動するなんてほぼあり得ない。

「いーんだよ。僕はこの『セモンに無料券を渡す』という行動に満足したんだから」
「まぁ……そこまで言うならありがたく貰っとくけど……本当に良いのか? お前自身がそうさんとか、刹那とかと一緒に行けば良いじゃないか」

 清文が口にしたのは、彼の友人の星龍そうと、妹の天宮刹那の名前だ。二人とも陰斗の家族の様なものなので、家族旅行の要領で連れていけばいいと思ったのだが……。

 その事を問うと、陰斗は苦笑としかめ面が混ざったような変な顔になって答えた。

「おいおい止めてくれ。刹那はともかくとして、そうにそんな事言ったら殴られるか手痛く断られてその後一ヶ月口を聞いてもらえなくなる。そうなったら僕はお仕舞いだ」
「……」

 彼女そういうイベント嫌いだからね〜、と、呑気に笑う陰斗。しかし目が笑っていない。

 ――――あぁ、こりゃ経験者の顔だ。

 ――――と言うか多分既に断られてるんだろうなぁ。

 清文は内心で納得する。陰斗はそうの事になると異様な長さとテンションで語り始めて暫く止まらないので、その話題は避けることにした。

 そんなこんなで話を続けていると、何時の間にやらお開きの時間になっていた。

「何はともあれ、無料券は有り難く頂戴するよ。琥珀と行ってくる」

 立ち上がりながらそう言った清文に、陰斗が苦笑しながら答えて曰く、

「そこですんなり嫁の名前が出てくるキミは凄いな。ま、せいぜい頑張りたまえよ。まだ一回も抱いてないんだろ」
「ぶふぉっ!?」

 随分と際どい発言に、なにも口に含んでいないというのに、清文は思わ
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