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クルスニク・オーケストラ
第十一楽章 少し早いピリオド
11-3小節
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に心を閉じて温厚なフリをするでもなく、リドウのようにネガティブな感情に素直に生きるでもなく、ヴェルのように機械的にふるまって受け流そうとするでもなく。

 ジゼル・トワイ・リートは己の心に忠実でありながら、プラスの波長を生み出す――面映ゆい言い方を選ぶなら、希望を振り撒く女性だ。恋したユリウスの死でさえ、ジゼルの性質を疵つけることはできなかった。

「かつてわたくしが言ったことを覚えてらして? 《マクスウェルの次元刀》を回収した時のことです」
「覚えているとも。例え消えて無くなる人々であっても、これから壊す世界であっても、自分たちが覚えていればなかったことにはならない。貴女が一番に俺に教えた、分史対策エージェントの心構えだ」

 まさか、ここが分史世界であっても、正史世界からここを壊しに来る連中が私たちを覚えているから消えて無くなるわけじゃない、とでも言い出さないだろうな。そんなものは詭弁だ。

 するり。長いフレアスリーブに隠れた手が、被っている仮面を外させた。
 黒い左半面を温めるように、ジゼルは手の平を当てた。

「さっきの質問に答えましょう。貴方が時歪の因子(タイムファクター)だからです、ルドガー」
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