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貴方が・・・・・・いない
第一章
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第一章

                  貴方が・・・・・・いない
「それじゃあ今は」
「・・・・・・うん」
 彼が頷いた時。その時が一番悲しくて辛かった。
 それと一緒にこれまでのことを思い出してきて。涙が溢れてきた。 
 彼の笑顔が瞼に浮かぶ。けれどその笑顔が滲んで揺らいでいて。声も何もかもが震えてきているのが感じられて。俯くそこに見えるものも全部滲んできていて。私はその中でこれまでのことを思い出していた。
 最初に声をかけたのは私だった。彼の目がとても奇麗で。
 学校の行き返りのバスの中でいつも会う彼。その彼に気付いた。
「ねえ、あの子って」
 いつも一緒にいたクラスメイトの女の子に尋ねた。
「何処の学校かしら」
「確か櫻井高校よ」
 その娘はすぐに私に答えてくれた。そして彼の鞄を指差した。
「っていうか書いてあるじゃない。櫻井」
「あっ、そうね」
 私は今更そのことに気付いて。自分の迂闊さに首を捻った。
「書いてあるわね。確かにね」
「そうよ。何でそんなこと言うのよ」
「ちょっとね」
 このことは誤魔化した。本当のことは恥ずかしくて言えなかった。
 けれどその奇麗な目が心に焼き付いて。ある日彼に自分から声をかけた。
「あのね」
「何?」
「貴方名前何ていうの?」
 ここからはじまった。私と彼との時間。私はすぐに勇気を出して彼に告白して。それで学校の行き返りはいつも一緒にいるようになった。
 すぐにそれだけじゃなくなってデートもするようになって休日も一緒に色々な場所に行くようになった。私は本当に幸せだった。
 近くにいたくてたまらなくて。彼のことばかり考えていた。彼のことを想うだけでそれだけで胸が小さく痛んで。けれどそれにはわざと知らない、気付かないふりをしていた。それがどうしてなのかは本当に気付いていたのに。
 言葉を交わすだけで幸せになれて嬉しくなれた。彼といられるだけでその目で見てもらえるだけで。私は最高に幸せだった。
 私もこの想いを彼に捧げたかったしそうしてきた。彼も幸せだったし私も幸せだった。けれどその幸せは急に終わってしまった。
「御免、俺実は」
「実はって・・・・・・」
「もう日本にいられないんだ」
 申し訳なさそうに私に言ってきた。
「もうこれで」
「嘘、何で・・・・・・」
「親父が転勤するんだ。イギリスに」
 彼は私から視線を逸らして俯きながら話してきた。
「ロンドンに。お袋も俺も一緒に」
「じゃあこれで」
「悪いけれど」
 また私に言ってきた。その苦しい言葉を。
「もう会えないんだ」
「そんな、ロンドンって」
「二人でいられて本当に楽しかった」
 けれどその言葉は今の私には届かなかった。
「それでも。もう」
「折角、一緒になれたの
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