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豹頭王異伝
暁闇
キタイの情勢
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務めておる。
 後は魔王の恐怖に耐え希望を棄てぬ者達の想い、心情を直接ユー・メイに話って貰う方が良いだろう」
 イェライシャに促され、ユー・メイの唇から言葉が溢れた。

「グインさん、おねがいします。
 みんなを、助けてください。
 リー・レン・レンは、よその国の人に無理を言ってはいけないよって言うけれど。
 シャオロン兄ちゃんも、レンファー姉さんも竜の門と戦って酷い怪我をしているの。

 初めは怖いと思っていた望星教団の人達も大勢、死んだり怪我したりしています。
 あの夜みたいに、キタイ中が酷い事になってるみたい。
 みんな力を合わせて、頑張ってるんだけど。
 何時まで大丈夫か、わからない。

 竜の門に家を焼く払われて、諦めて故郷を捨てる人達も大勢いるみたいだけど。
 キタイを元の平和で豊かな国にするんだ、絶対に逃げ出さないって頑張ってる人も沢山います。
 グインさん、お願いです。
 みんなを、助けてください」

 注意深く聞き入っていた豹頭が頷き、丸い耳が微かに動いた。
『北に一匹の豹が現れ、世界を護るであろう』
 暁の女神アウラ・シャーに仕えるナディーヌの父親アーミス、神殿の祭司長が語った予言の対象。
 ランドック帝王の身分を証明する宝珠ルーエの三姉妹、ユーライカの瑠璃が思慕する豹頭の追放者。
 銀色に輝く天上の都から遂われた廃帝、ケイロニアの豹頭王は真摯な力強い口調で東方の使者に応えた。

「ユー・メイ、心配は要らぬ。
 俺はリー・レン・レンとお前の兄、シャオロンに約束した筈だ。
 キタイ独立の為に彼が起った、と風評が流れて来た時には俺も必ず起つ。
 必要とあれば中原各国に檄を飛ばし、竜王を討つ為の軍を起こすとな。

 リー・レン・レンは俺との約束を守り、既に竜王を敵に廻す覚悟を固め闘っているのか。
 ヤン・ゲラールも俺と交わした契約を反故にせず、誠実に彼等を守ってくれているのだな。
 俺も、約束は違えん。
 パロから竜王の勢力を一掃した後、キタイへ必ず援軍を送る。

 いや、そうではない。
 俺が軍を率い直接、キタイに乗り込む。
 ノーマンズランドで竜王と最初に心話を交わした時から予感していた。

 竜王と俺は何度も死闘を重ねる宿命にあり、その結果に拠り世界の命運は決するだろう。
 安心しろ、ユー・メイ。
 俺は約束を破らぬ、あの夜と同じだ。

 竜王の恐怖を打ち破り、キタイの民を助ける事を誓う。
 お前が兄や仲間と巡り会えた様に、圧政に苦しむ人々を救って見せる。
 彼等は俺が行くまで持ち堪えると約束した、俺も約束は忘れておらぬ。
 リー・レン・レンやシャオロン達を助け、キタイを人々の手に取り戻す為に戦うぞ」

 涙を溢れさせて縋り付く少女を抱き止め、
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