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バカとテストと白銀(ぎん)の姫君
プロローグ 姫君とナイトと和菓子屋さん(3)
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の余計な邪魔のせいで気が萎えた、とか勝手なことを抜かしながら退散していった。
「はぁ……ったく」
男の後ろ姿が見えなくなったのを確認してから女の子の方に向き直る。
「……大丈夫?それとも余計なお世話だったかな?」
よくよく見ると男の子っぽい服装をした女の子だ。
「いえ、助かりました。」
周囲に野次馬の姿がないといっても、やはりやりすぎた感は否めない。
少し気まずく思っていると女の子の唇から、それこそ花のような笑顔と一緒にそんな言葉が零れ出た。
「その…ありがとう…」
 自然と、本当に自然と微笑み返してくれた彼女の表情に、出すぎたことじゃなくてよかったとあたしは一安心した。
「……ですがいつもこんなことを?」
「え、まさか。」
軽く肩を竦めると小さく笑って見せる。
「ただ、貴女の顔から……SOSが出てるように見えたから。」
自分で言うのは妙に恥ずかしく、少し頬が朱く染まっていくのがあたし自身でも分かった。
「SOS(救難信号)……」
「どうしてそう思ったのか、それは解らないんだけどね……」
腕時計を見ると、もうすぐ待ち合わせの時間になるころだった。
「じゃあ、あたしはこれで。待ち合わせに遅れる!」
「……ありがとう」
立ち去ろうとするあたしの背中に、不意に投げかけられた言葉……それを聞いてあたしは、ちょっとだけ可愛らしい彼女の方を振り返る。
「貴女可愛いんだから、そんなところでボーっとしてたら駄目だよ……!」
それだけ言って手を一回だけ振ると、あたしは待ち合わせ場所へと駆けていく。なんとなく、このままここにいたら未練がましく思ってしまいそうだから。



「……可愛い、か」
不思議と、あんな笑顔で言われてしまえば気にならないものだけれど。
「その言葉は、そっくりそのまま……貴女に返すよ。」
そんな可愛い彼女をしばらく見送り、彼女のいってしまった方向に背を向けて女と間違えられた彼はゆっくりと歩き出した。


これは「彼」が学園の近くのアパートに引っ越して間もない話。

互いに背を向けそれぞれの道を進む、もう二度と会うことはないだろうと思っている二人はまだ知らない。

今ここで分かれゆく道の先で、再び二人の未来は交わることを

そして

自分には決して与えられることは無く、また得る資格もないと思っていた感情を、誰かと分かち合うことが出来る歓びを




あたしは待ち合わせの時間に、少し遅れて公園に来てしまった
一陣の風が吹き抜け、桜の花びらが吹雪いている。
そして、季節外れの白銀色も波打っていた。
「遅いですよ、薫子さん」
印象的で中性な声の主と目線が交差する
「ごめん、遅れちゃった」


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