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青い春を生きる君たちへ
第7話 嫌いじゃないわ
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、納得しようとしている。
何だ、俺も勝俣もあの労働者も、みんなみんな一緒じゃないか。どうにもできない事を諦めて、それでも仕方なしに生きていこうとしている、非力な人間……


「嫌いになれないのよ」
「は?」
「自分に嘘をついてでも、嘘を必死に信じようとしてでも、何とか生きていこうとしている……そんな健気な姿は、頭ごなしに否定する事はできないわ。少なくとも、私にはその資格はない。……私も同じだから」


さっきから、無表情のイメージ通りの、少し冷ややかにも聞こえる言葉を吐き続けていた高田から意外な言葉が漏れた。どこか超越したような所がある、孤高の美少女が見せた、少しばかりの憂鬱。気がつくと、高田が小倉の方を向いていた。いつもの、モノを見るような目では無かった。気のせいかもしれない、そう見えただけかもしれないのだが……小倉には、その表情は少し微笑んでいるように見えた。


「……あなたの、そうやってお節介な所。冷めてる振りしてる癖に、ちょっと中途半端な所も、嫌いになれないわね」
「……は?な、何だって?」
「何でもないわ。さ、行きましょう。田中くん、戻ってきたから」


高田は立ち上がっていた。田中が「悪い悪い!遅くなった!」と元気に謝りながら、こちらに走ってくる。高田は、小倉の方をもう振り返らなかった。その背中、凛と伸びた背中を見て、小倉も立ち上がる。小倉自身の背筋も、しゃんと伸びた。嬉しくなるような話はただの一つもしていないし、むしろ暗くなってもおかしくないような下らない話だったのだが、小倉の気持ちは少し、さっぱりとしていた。



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