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青い春を生きる君たちへ
第3話 平手打ち
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のか?しかし、そういうクサい台詞を吐いても許されるような男ではある。小倉がため息をつくのと、昼休み終了の予鈴が鳴るのは同時だった。



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「……おい、てめぇ」


放課後になり、帰り仕度を整えていると、眉間に皺を寄せ、ポケットに手を突っ込み背筋を不自然に曲げながら、小倉に声をかけてくる奴がいた。カッターシャツの裾がだらしなくはみ出して、ずり下げられたズボンからは下着が見えているが、もちろん小倉はこんな友達を持った覚えはない。覚えはないが、小倉としては、こういう手合いがやってくる事は予想がついていた。


「ちょっと面貸せよ」
「おう、手短にな」


精一杯いきがって威圧している相手に対して、少しも表情を変えない小倉の反応というのは結構シュールだったが、それは小倉がこんな仕草も表情も全てただのポーズ、「恐ろしさ」の記号でしかないという事を知っているからだった。ビビる様子もなくあっさりとしている小倉の態度に腹が立ったのか、相手は小倉に対して手を出そうとした。


「……おいおい、こんな所で始めちまったら邪魔が入るだろ?もっと良い所でやろうや」
「……」


自分を掴もうとした相手の手が自分に達しない間に、小倉の手がそれを掴んでいた。薄ら笑いを浮かべる小倉に対して、相手の表情はさらに憎悪を募らせていく。


「あ、謙之介!今日一緒にセガワールド行く予定だったよな!ん?何?直斗も謙之介に用事あるの?でもさ、俺も急いでんだよ、悪いな、また今度にしてくれよ〜」


二人の険悪なムードが高まる中に、また田中が割り込んできた。小倉と、この「お客さん」を引き離すべく、気を回してやってきたのだろう。小倉は内心で「気を使いすぎる奴だ…」と呟いた。してもいない約束を無理にでっち上げた辺り、これからどんな事態になるのかは察しがついているのだろう。だが、小倉は今回は田中の「お気遣い」に甘える気は無かった。


「おい、田中、お前今日は先に行ってくれ。俺はこいつとの話をササッと片付けてから行くから。」
「え?おいおい、約束だろ?」
「友達だったら、一回くらいの不実は許せよ」


ニンマリ笑った小倉に、田中は返す言葉が無かった。小倉は自分に絡んできた生徒に向き直り、耳打ちした。


「……で、どこで(お話)しようかね?」



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田中から直斗と呼ばれた少年が小倉を連れていったのは、学校の敷地の隅、ごみ捨て場の近くのスペースだった。体育館裏は案外、放課後は部活生がたくさん居たりするのだ。その点、ごみ捨て場にわざわざ行こう
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