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クルスニク・オーケストラ
第八楽章 エージェントの心構え
8-2小節
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には長年エージェントをしてきたゆえの説得力がある。

「ですから、わたくしたち分史対策エージェントは、分史世界の存在の尊厳を認め、誠実に接しなければいけませんの。他でもないわたくしたちの記憶が、わたくしたちを押し潰さないように。忘れられず、覚えている記憶たちが、心を苛まないように。――お分かり?」
「……たとえ世界ごと壊しても、その世界での自分の行いはなかったことにできない。俺が覚えてて、忘れない限り、なくならない。――胸に刻みます」
「よろしい。今日は帰って休みなさい。報告はわたくしがしておきます」
「え? でもジゼル、さっき、《レコード》吸収して」
「このくらい慣れっこですわ。先輩の言うことが聞けないんですの?」

 ルドガーは逡巡したが、帰ることにした。分史とはいえエリーゼをいたぶったジゼルと、エルを同じ場にいさせるのは酷だと考えたからだ。

 ルドガーはジゼルに一礼して、エルを連れて歩き出した。
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