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魔法科高校の神童生
Episode33:負けられぬ戦い
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九校戦六日目 新人戦三日目

新人戦アイス・ピラーズ・ブレイク決勝リーグ最後の舞台に、燕尾服の裾を靡かせ隼人は立った。
合計24本の氷柱を挟んで向かい合うのは、第三高校エース、十師族中、『一』の称号を賜る名家の跡取り、クリムゾン・プリンスの『一条 将輝』。
互いに負けられない理由を胸に、二人は試合開始の合図を待つ。
『血塗れの王子』と『執事服の魔王』の戦いが今、始まろうとしていた。

「………だ、大丈夫なのでしょうか?」

注目株であるこの二人の試合に、観客席は一般用と関係者用共に満員。更にVIP席にはあの世界最巧とまで謳われた魔法師、九島烈の姿さえあった。沸き立つ観客席の中、隼人とほのかのお陰で早く立ち直った雫や、他のいつものメンバー+英美と里美が、心配そうな表情で隼人を見ていた。
それはそうだろう。さっきから隼人は険しい表情で自分の腹を殴ったりしているのだから。
思わず不安げな声を出した深雪に、英美がプッと吹き出す。

「隼人は緊張に弱いんだよ。だから、こんな大勢の中で注目されたら胃も痛くなるって」

英美の解説になるほどな、と達也は頷いた。ならば大丈夫だろう、隼人はONとOFFの切り替えは出来る。緊張を試合に引き摺る彼ではないはずだ。

「そ・う・い・え・ばぁ」

と、そんな時今まで押し黙っていたエリカが耐えられないとばかりに前に座る雫を後ろから抱きすくめた。
嫌な予感が、達也の第六感を刺激した。

「アタシ聞いちゃったんだけどねー? 隼人クンってばこの試合、『雫の為に、勝ってくる』なんて言ってたらしいじゃない!」

ご丁寧に隼人の声真似まで交えて落とした爆弾に、雫は頬を赤らめ、英美はその表情を無にした。
なんつー爆弾を落としやがる、とレオが非難の眼差しを向けるもエリカはどこ吹く風。不穏な空気を感じた幹比古と美月はそっと体を安全地帯へと避ける。

「ほうほう、雫の様子からしてこの噂は本当、と。それでそれで!? ときめいたゃった?ときめいちゃった!?」

いつになく上機嫌だなと、達也は現実逃避気味の感想を胸の内で呟いた。しかし隼人も大胆なものだ。誰にとは言わないが、後ろから刺されかねないぞ。いや誰にとは言わないが。
そして雫は顔を赤らめるんじゃない、隣で赤い髪が生き物のようにうねっているのに気づかないのか。
妹からの救援信号が送られてくるがここは我関せずを貫かせてもらう。深雪には悪いが、三角関係の拗れとやらは根が深く厄介なのだ。なるべく関わりたくない。
せめて隼人に頑張れよという意味合いの眼差しを向けて、達也はお手洗いへと旅立って行った。







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