明け方の少女の心に
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『ふふ、また桂花の負け』
『な、なんで!? コレ死石だったじゃない!?』
『あっちゃー、死んだ碁石を生かすなんて、やっぱ夕は凄いねー』
『もう一回! もう一回やったら負けないわ!』
『ふっ、無様』
『無様ー♪』
『あんたは私に負けたでしょ!?』
他愛ない思い出。友達との至福の時間。壊されるなんて思わなかった平穏の時間の一つ。
『何よ?』
『なんでもない』
『なんでもなーい♪』
『はぁ? じゃあ見てるんじゃないわよ』
『お茶がおいしい』
『だねー♪』
『無視すんなーっ!』
柔らかな午後。陽当りの日常。楽しくて仕方なかった昔の出来事達。
『あの街の太守は欲が深いからこうすべき』
『だ、か、ら! 始めっから利用するんじゃなくて徐々に懐柔する事も大事じゃない!』
『あー、確かに懐柔してから絶望に叩き落とす方がいいね♪』
『む、そういうこと? 桂花も中々悪どくなった』
『なんであんた達はそっちに持ってくのよ!?』
『『楽しいから』』
『我欲優先すんなバカっ!』
いつも怒っているのに怒って無くて。心の中には喜びと信頼があった。
『夕……曹操様って、どう?』
『……桂花好みの人物だと思う。経歴も、思想も、在り方も』
『お? 曹操のとこ行くの?』
『ま、まだ決めたわけじゃないわ』
『ん、分かった。調べておく』
『あーあ。桂花居ないと寂しくなっちゃうなー』
『まだ決めたわけじゃないってば……そんなの私だって……』
『なんか言った?』
『にやにやすんな淫乱! 夕も!』
あっと言う間に過ぎ去った泡沫のまほろば。それでも思い出は輝いて見えて。
『桂花、そろそろ此処から出て行くべき』
『え? まだ決めかねてるのよ。もうちょっとだけ……』
『あー、無理。そろそろおしまい。時間も勿体無いしー』
『な、何よ? なんでそんないきなり……』
『出て行くべき』
『……もうちょっと待ってって言ってるじゃない』
『違うよ? 桂花はもういらないって言ってんのー。子猫ちゃんには分かんないのかなー?』
『なっ……何よその言い方……』
『足手まといだから消えてってこと』
その時は余りの衝撃で気付けずに、
『あんた達なんかっ……っ……大っ嫌い!』
『こっちもせいせいするってば。じゃあねー♪』
『精々足掻けばいい。どうせ私に負けるけど』
『バカ! 死ね! ヒトデナシ! 見てなさいよ! 絶対に見返してやるんだからっ!』
彼女達の内側なんか読もうともしなかった。
後で調べて気付いても、後悔は先に立つ事は無く。
救い出すには闇が深過ぎて、自分一人の力では絶望しかなかった。
『ねぇ、二人とも』
『何?』
『何ー?』
『もし、あんた達に鎖が無くて曹操様
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