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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
11話 世代の流転
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で座した千堂専務に本題への移行を告げるが、彼は己の隣で黙して座す唯依へとちらりと視線を投げ、その内容を聞かせていいのかと問う。

「わざわざこうした場を設けたんだ、特に問題は無い。」
「分かりました……では、基本的な分担生産ですが、新型近接兵装は二種とも冨獄重工にてパーツ生産を行い、弊社で最終組み立てと仕上げ加工を行い納品という手筈になっております。」

 戦術機開発の御三家、光菱・河崎・冨獄。この三社は重工業と一言に言ってもそれぞれに特色がある。
 冨獄は複合素材形成に特に秀でて、河崎は船舶やプラントの建造が主であるため、その仕上げ加工に実績がある。それらの各社の特性のためこのような生産分担となったのだ。
 事、冨獄の素材技術は最大規模である光菱重工どころか、ボーイング社ですら凌駕する。


「次に、新型跳躍ユニットエンジンの開発ですが、冨獄・光菱と弊社それに石河島梁重工を加えた4社と東北大学を初めとしたプラズマ技術研究機関の協力の元、VASIMRエンジンの実用化のための研究開発を行うよう段取りを取る心算です。
 ―――しかし恐らく、主開発企業は石河島梁重工となるでしょうね、我々は不知火の量産整備、冨獄は日本戦術機の全機種の跳躍ユニットに武御雷の量産・整備により全くの新規開発・工場開設のリソースがありません。
 それに不知火弐型の開発に伴い、その保守整備を行わなくてはならなく成るであろう冨獄は更にリソースを削られる―――ライセンス生産ともなれば更に人員も設備も割かれる。」
「そうか、冨獄は成功するかも分からない電気推進への冒険を嫌った。そういう風にも見えるがな?―――まぁ、跳躍ユニットなんて損耗パーツのアフターケアが大変なのは理解できるがな。」

「ええ、あの会社は銀行が大株主ですから仕方ないでしょう。ああいった“数字計算だけ”が取り柄の連中は先進開発の意味を理解していることは殆どありません。
 私も不知火の開発に際し、随分と苦労をしました―――外国機導入で問題ないやら、冒険する価値があるのかやら、かなりの嫌味を言われましたよ。」
「苦労を掛けるな。」

「いえ、この状況で何もしないというのでは我々が存在する意義そのものがありません。苦労の一つや二つは喜んで背負いますよ―――それに、息子や娘が前線へと送られる社員も決して少なくは無いですからね……私も一人の親として彼らの気持ちは理解できます。」


 その声色と口調から複雑な感情が彼の内に渦巻いているのだろうっと察しが付く。
 篁中佐は一体、どういう気持ちだったのだろうか―――大陸での敗北、現実の問題となったBETAの日本上陸と徴兵……やがて自分の娘が戦場に立つのを予期した彼は、愛娘が生き残れるように、最高の戦術機を生み出したかったのかも知れない。
 それでも
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