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機動6課副部隊長の憂鬱な日々(リメイク版)
第5話
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1時間後。
男からの聞き取りを終えたゲオルグは尋問班の面々が待つ隣室へ向かった。

ゲオルグが扉を開けて部屋に入ると、中に居た3人の男たちが一斉に
ゲオルグの方を振り返った。
ゲオルグは彼らの顔を順番に眺めて肩をすくめる。

「以上です。 これでよろしいですね?」

自らの功績を誇ることもなく、普段と変わらない口調でゲオルグが尋ねると、
渋面を浮かべた3人の男たちは揃って頷いた。

「十分だ」

彼らを代表して尋問班の班長が短く答えた。

ゲオルグの取り調べで、テロ集団の背後にいたのは現地の行政官であったことが
判明し、情報課ではすでにその人物の調査と内偵に向けて動きだしている。

その意味でゲオルグの功績は大きいのだが、彼自身はそれを全く意に
介していないようで、無表情な顔を縦に振って尋問班の班長に向かって頷いた。

「では、後の処理はお任せしてもよろしいですよね?」

「もちろんだ。 それくらいは我々でやらせてもらう」

「わかりました。 それでは、俺はこれで」

短い言葉を交わし合い、ゲオルグはくるりと向きを変えて男たちに背を向ける。
数歩歩いて通路へ出る扉の前まで来たとき、ゲオルグは何かを思い出したかのように
”ああ、そういえば”と声を上げて足を止めた。

「これでまたひとつ貸しです。 債務超過になる前に返済してくださいね」

男たちの方を振り返りにっこりと笑ってそう言うと、
ゲオルグは扉を開けて部屋を出て行った。

扉が閉まり、どんよりとした静寂が部屋の中に戻ってくる。
ややあって、尋問班長の深いため息がその静寂を破った。

「返す言葉もないな。 我々は何かあるとすぐ彼に頼ってしまう」

「はあ。ですがシュミット3佐もよくあそこまでやれますね。
 大した役者というか、なんというか・・・」

尋問班長の言葉に続いて尋問班に所属する2尉がゲオルグの出て行った扉を
見つめながら感心したように言った。


テログループのリーダーの男は、自分が喋るまでゲオルグが仲間を殺し続けると
思って折れたのであるが、実際には彼自身以外のグループの構成員は
ゲオルグたち工作班によって本拠地を襲撃されたときに殺害されているのだから
そんなことは不可能だったのである。

そこでゲオルグは次のような手を使った。

男を拘束している部屋を出るとゲオルグはすぐ隣の尋問班の3人がいる部屋に入り、
彼らに取調室のスピーカーに音を流させるように言った。
彼らが準備を進める間にゲオルグはレーベンにある音声記録の再生を指示した。
それは、テログループの本拠地を襲撃したときに録音したグループ構成員を
殺害したときの音声だった。

そして、ゲオルグは足音や扉の開閉音・自
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